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介護する人のための高血圧対策

家庭で介護を行っている女性の健康状態を名古屋大学の医学部が調査したところ、介護を行っていない人と比べて高血圧の人が若干多いということが分かりました。こうした状況は、調査対象となった女性だけに限らない可能性も考えられます。特に現在、高齢者が高齢者を介護することの増えている日本では、高齢になるほど血圧が上がる傾向を加味すると、高血圧になる介護者の増加が心配されます。

介護者の健康

自宅介護を行なっている方は、ストレスや睡眠不足、食生活の乱れといった、ご自身の健康状態を悪化させる要因を抱え込まざるを得ない状況になりがちです。これらの要因は高血圧の危険因子でもあります。

高血圧は、脳卒中、心不全、腎不全などの合併症が現れるまでは、自覚症状を感じにくいのが特徴です。こうした合併症は、高血圧になってから10年ほどして現れることも多く、気がつかないうちに健康状態を悪化させている心配があります。家庭で介護を行なっている女性の健康調査でも、高血圧と診断された人の約半数の方は、高血圧であることを自覚していませんでした。

家庭介護を行っている介護者は、どうしても健康対策が後回しになりがちです。しかし、自分を上手に労わることができる人ほど、介護による様々な問題にも前向きな考え方をしているということに、ぜひ留意してください。

結果的には、介護者が健康であることが要介護者によい影響を及ぼすのです。

ストレスと睡眠不足

血圧の変動は、自律神経の働きによってコントロールされています。このためストレスは、血圧の問題に直接的な影響を与えます。介護を一人で抱え込み、ストレスに悩んでいる方は、より積極的に介護サービスを活用することを検討してください。ケアマネージャーや訪問看護師に介護の現状を相談して、最低でも週に一日は、介護を休める日を作りましょう。自分のことを優先してよいのだろうか、と考える必要はありません。

介護を行なっていると、夜間、突然起こされるという経験をされると思います。このことが大きなストレスになっている方もいらっしゃるでしょう。高血圧対策としても、睡眠時間はできるだけまとまった時間を確保したいところです。そのためには、どのような介護の方法が考えられるでしょうか?

まず、要介護者の夜間の生活リズムを把握しましょう。そのうえでそこから、おむつ交換の時間を見極め、できるだけ決められた時間におむつ交換を行なうようにするのです。介護者は、自ら夜間の生活リズムを整えていくことが大切です。できれば、夜間対応型訪問介護の利用も検討してみてください。

食生活の注意点

長期間にわたって家庭介護を行っている方は、自分の食事に手間をかけるのが難しいという現状があります。手軽に摂れるコンビニ弁当やインスタント食品は、高塩分・高カロリーなものが多いので注意が必要です。栄養価が高くて簡単に作れる献立を試してみることや、栄養価の高い食材を覚えておくようにしましょう。

その他の注意点としては、朝食を必ず摂ること、そして、夕食があまり遅い時間にならないように気をつけてください。朝食は血糖値を上げ、脳の働きを活性化することで精神的にもよい影響を与えます。また、睡眠中に消化器官が働いていると眠りが浅くなるので、夕食は就寝の2時間前までに済ませましよう。

ご自宅でも血圧測定を

健康診断や病院で測定したときは正常範囲でも、夜間や早朝などに血圧の値が高くなる方も少なくありません。

家庭で血圧を計って、収縮期血圧135mmHg以上・拡張期血圧85mmHg以上の場合は注意しましょう。この値を超える日が週5日程度ある場合は、かかりつけ医に相談してください。高血圧の原因を正確に診断するためにも、介護生活の現状を医師に必ず伝えましょう。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年2月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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