「東日本大震災」で大きなダメージを受けた「福島第一原子力発電所」。
以降、「放射能」という言葉が、新聞やテレビのニュースで取りざたされています。いったい、「放射線」の何がどうコワイ?
Q. |
「放射線」という聞き慣れない言葉が、福島第一原発の事故以来、話題になっているけど? |
A. |
まず、「放射性物質」という言葉を知っておこう。放射性物質は放射線の発生源で、この放射線が、生物に害を与える。「放射能」という言葉もあるが、これは放射性物質が放射線を発生する能力のこと。 |
Q. |
原発の事故で放射線が出たということは、原発には放射性物質があるの? |
A. |
ある!原子力発電の燃料は、「ウラン」という放射性物質だ。 |
Q. |
ええっ、燃料が放射性物質!?それじゃあ、原発からは、いつも放射線が出ているの?人間の身体に悪いんでしょ? |
A. |
そう。そこで発電所の外に放射線が漏れないように、内側からペレット、被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋という、いわば「5重の壁」によって守られているんだ。 |
Q. |
でも、去年の大震災の地震や津波の前には、その5重の壁も役に立たなかったんでしょ? |
A. |
それほど、大きな災害だったということだね。 |
Q. |
原発のニュースのときに、「ベクレル」とか「シーベルト」っていう言葉を聞くけど……。 |
A. |
そうだね。放射性物質が放射線を出す能力を表す単位が「ベクレル(Bq)」で、放射線の人体への影響度合いを表す単位が「シーベルト(Sv)」だよ。 |
Q. |
放射線の何がいけないのかな? |
A. |
原子力発電の燃料であるウランは、天然の放射性物質だが、原子炉の中でウラン燃料が核分裂するときに、多量の放射線が生み出されるんだよ。アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線と呼ばれている。 |
Q. |
放射線にもいろいろあるんだね。 |
A. |
そう。特に中性子線は、ウランやプルトニウムを核分裂させてエネルギーを発生させるために必要なんだ。でも、この中性子線というヤツが、なかなか厄介なんだ。 |
Q. |
ふーん、どうして? |
A. |
アルミや鉛、厚い鉄板も素通りしてしまう。水やコンクリートの厚い壁で、やっと、素通りを防げるんだ。 |
Q. |
うわーっ、コワイんだ!それじゃあ、人間の体のなかにも入ってきちゃうのかな?被爆っていう言葉もあるよね? |
A. |
そう。人体が放射線を浴びることを被爆というんだ。原子爆弾などによる極めて短時間の高線量の被爆でなければ、人体が分子レベルで崩壊してすぐに死んでしまったりする「分子死」はありえない。これを急性影響という。 |
Q. |
なーんだ、それじゃあ大丈夫なの? |
A. |
とんでもない!原発事故レベルであっても、人間の体内に入り込んだ放射線は、長時間かけて「DNA」を傷つける。これを晩発影響という。 |
Q. |
DNAって、遺伝に関係しているんだよね。 |
A. |
そうだよ。いわば、「生き物の設計図」ともいうべき役割を果たしている。ところが放射線により、その設計図が間違ったものに変えられてしまうことで、必要もないのに、どんどん細胞分裂していく。それが、「がん」だ! |
Q. |
ええっ、放射線は「発がん物質」なの? |
A. |
そう考えると分かりやすいだろうね。 |
A. |
被爆量とそれに伴なう発がんリスクの関係は、被爆線量に比例して、がんの発生率が高まるといわれている。さらに問題なのは、被爆時の年齢が低いほうが、放射線によるDNAの損傷が大きいということだ。 |
Q. |
子どものほうが大きな影響を受けるということだね? |
A. |
そういうことになる。 |
Q. |
そして今回のような事故の場合、土地や海や空気にも、放射線がばらまかれてしまうんでしょ? |
A. |
そうだね。そうした自然界の汚染は、身体の表面についたら除染できるが、穀物や肉、魚にも取り込まれてしまう。そしてそれらを食べることで、体内での内部被爆が起こる。 |
Q. |
うーん、「絶対安全」といわれてきたのに……。 |
A. |
「絶対」などという言葉は、ありえないということかもしれないね。だから原発をなくそうという動きも、活発になっている。 |
Q. |
すぐにやめちゃえばいいのに。 |
A. |
そう簡単にはいかないんだ。原子力発電をやめることを「廃炉にする」というんだが、それには何十年もかかるし、また、お金もたくさんかかる。火力発電に戻せば、われわれが使う電気代も今より高くなる、などの問題がある。 |
Q. |
それじゃあ、どうしたらいいの? |
A. |
とても難しいことだけれど、それをこれから、みんなで考えていかなければいけないね。人類の一員として! |
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年4月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載