寒い季節になると増えるのが、脳梗塞などのいわゆる脳卒中。脳の血管が詰まってしまうことで、その先の細胞が死んでしまう病気です。死に至ることもある怖い病気ですが、その大きな原因が生活習慣病の一つである高血圧です。
「脳卒中」は、脳血管障害の総称です。脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」と血管が破れて出血する「脳出血」とに分類されます。
脳の血管が詰まりふさがれると、動脈から供給されていた酸素や栄養物がそこから先に届かなくなり、脳神経が壊死(死んでしまう)してしまいます。
命にかかわることもある、怖い脳梗塞ですが、頻度の高い順に次の三つのタイプがあります。
@アテローム血栓性梗塞……脳の太い血管にコレステロールの固まりができ、そこに血小板が集まって動脈をふさいでしまうもの。
Aラグナ梗塞……動脈硬化が起こることで、脳の細い血管が詰まってしまうもの。
B心原性脳塞栓症……心臓にできた血栓が流れてきて脳の血管をふさぐというもの。発症すると致命的になることが多い。
脳梗塞の症状としては、手足のしびれや感覚の低下、手足の運動障害、言語障害、さらには半身不随、半身麻痺、意識障害、昏睡がみられます。
では脳梗塞の原因ですが、先に述べたように「動脈硬化」が関係しています。
動脈硬化とは、動脈の血管の内側にコレステロールなどの脂質や細胞が付着することで、血管が厚く硬くなり、血液が流れる空間が狭くなってしまう症状です。
そして動脈硬化を起こしたり悪化させる要因は、生活習慣病である「高血圧」です。
高血圧は、血液が流れるときに動脈の血管に加わる圧力が異常に高くなってしまう状態。動脈は強い圧力を受け続けることで、内側の壁が傷つき、硬くなってしまい、動脈硬化になります。
高血圧は、先に紹介した三つのタイプの脳梗塞すべてにかかわってきます。また、高血圧は脳梗塞以外にも「狭心症」や「心筋梗塞」の原因としても知られています。
それではさらに、高血圧を引き起こす原因について考えてみましょう。
高血圧は自覚症状に乏しく、いつの間にか高血圧になっていた!という場合がほとんどです。また、日本人の場合、高血圧患者の約90%が、原因がはっきりとは分からない、本態性高血圧というものです。ただし、原因がはっきりとは分からないとは言っても、高血圧になりやすい人はいます。それは、塩分の摂り過ぎ、過度の飲酒癖、喫煙、肥満、運動不足の人たちです。そのほかにも過労やストレス、睡眠不足が上げられますが、これらは皆、生活習慣と深いかかわりがあることに気がつかれたでしょうか。
高血圧の治療には、薬物療法以外に、食事療法、運動療法があります。世界保健機構(WHO)の基準では、140/90mmHgまでが正常血圧とされており、この値以上の人は、治療が必要とされ、まずは生活習慣の改善を行ない、食事療法や運動療法で血圧を下げます。食事療法や運動療法をきちんと行なっていても血圧が正常値まで下がらない場合には、降圧剤を用いた薬物療法を行ないます。なお、薬物療法は、食事療法、運動療法と併用して行ないます。
@食事療法
食事療法でまず気をつけなければならないことは「減塩」。
「21世紀における国民健康づくり運動」である「健康日本21」では、食塩摂取量の減少をめざしており、食塩の1日あたりの平均摂取量10g未満を目標としています。しかし、理想としては6、7gをめざしたいところです。現在の日本人の平均的摂取量は一日13gほどと言われていますから、およそ半分に減らす必要があるということになります。
具体的な方法としては減塩しょう油を使うようにしたり、酢や柑橘類などの酸味で味付けするなどの工夫が考えられます。
また、動脈硬化を促すコレステロールの管理も大切です。肉の脂身を控え、卵黄も一日一個程度にします。即席めんや乳脂肪、またスナック類や甘いものも控えるようにしましよう。
食物繊維を多く含む野菜やキノコ、海藻類や、青背の魚を多く摂ることを心がけます。
A運動療法
酸素をたくさん使う有酸素運動は、長期間続けることで血圧を下げる作用があることが知られています。ウォーキングや無理のない程度のジョギング、水泳といった運動がおすすめです。
高血圧は早めに適切な治療を行なえば、合併症の発生を防ぐと同時に、合併症を起してしまった場合でも、悪化や再発を防ぐことができます。
まずは生活の改善から。血圧を上手にコントロールして、脳梗塞を予防しましょう。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2012年12月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載