ヒートショックが原因で脳卒中や心筋梗塞を発症して亡くなる方は、毎年10000人にのぼるといわれています。
ちなみに、平成23年に交通事故で亡くなった方がおよそ5000人。いかに深刻な事態であるかわかります。
しかしヒートショックに関しては、現在のところ、その危険性が十分に認識されているとはいえない状況が続いています。
交感神経の働きによって、暖かいところでは血管が緩んで血圧は下がり、寒いところでは血管が収縮して血圧は上がります。これは、環境の変化に合わせて体温を一定に保つためです。
さて、温度の変化が穏やかであればさほど問題はないのですが、急激な変化に対したとき血圧はどうなるでしょうか?
このとき、急上昇(あるいは急降下)といった急激な変化が、血圧にも起こります。
これがいわゆる、ヒートショックとよばれるものです。
暖かいところから急に寒いところへ行くとゾクッとする感じを覚えるように、血圧の急激な変化は体感できるほど大きなものです。このためヒートショックは、高血圧症や動脈硬化、糖尿病といった持病がある人、または血管が脆くなっている高齢者に対しては、脳卒中や心筋梗塞といった重篤な症状を引き起こす可能性があり、命に関わる危険なものとなります。
ヒートショックが最も起こりやすいのは、冬場の浴室です。服を脱いでから浴槽に入るまでに「寒い」と感じる経験を日常的にしていませんか?こうしたご家庭では、ヒートショックによる重大事例が起こる可能性があります。
ヒートショックによる危険を防ぐために、収縮期(最大)血圧が、180mmHg以上、拡張期(最小)血圧が110mmHg以上の場合、入浴を控え、かかりつけ医に相談してください。血圧に不安がある方にとって家庭用の血圧計はなくてはならないものです。ぜひ、準備しておきましょう。
日本では昔から、水廻りを家の北側に設置するのが主流でした。このため、脱衣所や浴室は寒い環境にあることが多いようです。
まずは、入浴前に浴室を暖めておくようにしましょう。
「お年寄りに一番湯はいけない」という言葉があります。これなども、ヒートショックという言葉が生まれる以前から、生活の知恵として知られてきたものです。
浴室暖房ができれば理想的ですが、バスタブの蓋を開けておくという方法でもよいでしょう。冬場は湯温の低下が気になりますが、冷えた浴室の危険性を考えると、追い焚きや湯の追加で湯温の低下をカバーしたほうが賢明です。
脱衣所を暖めておく工夫をすることも必要です。簡易的なもので十分なので、手軽に使える電気ヒーターを用意しておくとよいでしよう。
その他には、床にはマットやスノコを用意すること、食後、とくに飲酒してすぐに風呂に入らないといったことも有効なヒートショック対策になります。
さらに浴室以外にも、トイレのときにヒートショックを起こして死亡するケースがあります。日本の家の多くは、リビングと廊下・トイレに約6℃〜10℃の温度差があると報告されています。トイレにも小さな暖房器具を用意しておくとよいでしよう。
−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2013年1月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載