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過敏性腸症候群

強い緊張やストレスを強いられたときにお腹が痛くなることはほとんどの人に経験があるでしょう。

しかし、例えば、通勤・通学の途中や仕事・授業中、その他にも日常的に繰り返し起こるケースであれば、過敏性腸症候群(IBS)という病気の可能性があります。

腸の知覚過敏

過敏性腸症候群は、過敏性大腸炎ともよばれていました。実際には、この病気には小腸も関係しているため、現在では、過敏性腸症候群とよばれています。

過敏性腸症候群の原因のなかで最も多いのはストレスです。腸は、第二の脳とよばれるほど、脳と密接な関係のある臓器です。腸と脳は自律神経によってつながっていて、脳がストレスを感じると腸の働きに変化が起きる仕組みになっているからです。このとき、腸の働きが過剰になると腹痛とともに下痢に、腸の働きが不規則になると便秘になります。日本を含め先進国ではストレスが社会問題となっていますが、過敏性腸症候群はこうした状況を反映して、先進国でとても発症者の多い病気となっています。

過敏性腸症候群の大きな問題点としては、病気を発症しているにもかかわらず、多くの人が体質に原因があるので仕方がないと思い込んでいることです。

過敏性腸症候群の患者は、腸に知覚過敏を発症していることが考えられます。まず、「ストレスによって便秘や下痢を頻繁に繰り返しているのは病気を患っている状態」だということを意識するようにしましょう。

腸の知覚過敏は、心理療法や腸の働きをコントロールするための薬物療法によって緩和することが可能です。過敏性腸症候群の疑いのある人はあきらめずに、かかりつけ医に相談のうえ、消化器内科や心療内科を受診するようにしてください。

セロトニン3受容体拮抗薬

過敏性腸症候群に対する薬物療法には、高分子重合体(下痢の場合は腸内の過剰な水分を減らし、便秘の場合は便の通過を促す効果 がある)や消化管運動調節薬(腸管の運動をコントロールする)がおもに使用されます。そしてこの他に、近年使用されるようになり高い治療効果をあげているのが、セロトニン3受容体括抗薬です。

セロトニンは精神に安定をもたらす神経伝達物暦見で、その多くは腸に存在しています。脳がストレスを受けると腸の粘膜からセロトニンが分泌され、腸に存在するセロトニン受容体(セロトニンからの信号を受ける物質)と結合し、腸の運動を活発にします。過敏性腸症候群で下痢を起こす患者の場合、この働きが過剰なものとなっていることが考えられます。

セロトニン3受容体括抗薬は、薬の成分が腸のセロトニン3受容体と結合することによって、セロトニンがセロトニン3受容体と結合するのを防ぐ役目をします。この働きによって、下痢や腹痛を抑えます。

※セロトニン3受容体措抗薬は、現在のところ、おもに過敏性腸症候群によって下痢を起こす男性患者に使用されます。また、この薬の使用には、医師の処方が必要です。

朝食を摂るようにしましょう

 過敏性腸症候群は、自己流の対策では症状を長引かせ、悪化させる恐れがあります。とくに、長期間にわたって市販薬を使用している場合は注意が必要です。

 ただ、生活習慣の改善に取り組むことはとても有効な過敏性腸症候群対策となります。朝食をしっかり摂ることもその一つです。

 過敏性腸症候群によって下痢を起こすタイプでは、心配のあまり朝食を抜く人が多いようですが、早寝・早起きを心がけ、朝食を摂って、朝のうちに排便を済ませる習慣をつけるようにしてください。朝食を摂ることは、過敏性腸症候群によって便秘を起こしている人にも意識してほしい習慣です。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2013年5月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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