ホームクリニック

介護に役立つ、抱き起し方・移動の方法

障害者や高齢者を抱えた介護の現場では足腰などの痛みを訴える介護者が増えています。実際に介護は、なかなかの重労働。そんなとき、「ボディメカニクス」を知っておくと役立ちます。最小の力(労力)で介護する方法のことです。

「ボディメカニクス」とは力学の原理を応用した介護技術で、できるだけ小さな力で介護を行なおうというものです。

介護は毎日のことですから、精神的なものも含め介護する側の人の疲労は蓄積されていき、腰や腕など身体のあちこちに痛みなどを訴えるようになります。

そうした辛さを避けるために、日本の看護師を中心に体系化されたのが、「ボディメカニクス」という方法です。これは力学の原理を活用する技術です。ポイントとして、ちょっと難しい言葉ですが「力のモーメント」「重心」「慣性力」「摩擦力」があります。

力のモーメント

力のモーメントとは軸(点)の周りで物体を回転させようとする力量のことです。これを棒状にすると「てこの原理」 になります。支点から遠いほうの作用点に力を加えると力のモーメントが働き軽い力で済みます。

重い対象を持ち上げるときには、動かす側と動かされる側が離れていると、動かす側より、動かされる側の力のモーメントが大きくなります。このため、持ち上げる側に負担がかかるのです。動かす対象を自分に近づけることで、動かされる側の力のモーメントを小さくするようにしましょう。また、対象を自分に引き寄せたほうが、持ち上げるときの姿勢も楽です。

重心とは?

その物体を一点で支えたときにつりあう点が重心で、人間の重心は骨盤内にあるといわれます。

自分の姿勢を安定させるときは重心を低く、相手を動かすときは相手の重心を高めにすると効率的です。







慣性力とは?

慣性力が働くと、物体に力が働かないとき、あるいは力がつりあっているとき、静止している物体はいつまでも静止しており、動いているものはいつまでも同じ速さでまっすぐに動き続けます。

慣性力を介護へ応用するには、介護時に急激な動作を行なわないようにします。急激な動作を行なうと、慣性力の働きによって途中でその動作を止めることが難しいからです。また、一つの動作は一方向へ、動作を区切って行なうように意識しましょう。このほうが、効率的に慣性力を使うことができます。




摩擦力とは?

摩擦力は、物体が他の物体と接触しながら動くときに、動きを妨げる力のことです。

動き出す直前の摩擦力は最大摩擦力といって最も大きな摩擦力が働きます。じつとしている寝たきりの人を最初に動かすときは最も力が必要なので、摩擦力を減らす工夫をします。

最大摩擦力は裾癒(床ずれ) の原因とも考えられます。

ここで紹介した力の入れ方の技術を使って、少しでも小さな力で、できるだけ負担の少ない方法で介護を実践しましょう。ぜひ、日々の介護に生かしてください。

それは介護される人が、とても安全・安楽に介護を受けられるということでもあるのです。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2013年6月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

トップページへ