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バセドウ病

甲状腺は、のど仏の下あたりにあり、身体の新陳代謝を促進するホルモンを分泌する臓器です。

バセドウ病は、この甲状腺の働きを過剰にしてしまう病気で、新陳代謝が活発になりすぎるところに病気の特徴があります。

これは、「寝ている間でも、身体はジョギングしている状態」と例えられているほどで、慢性的な疲労感、動悸や手足の震え、大量の発汗、生理不順、下痢気味といった症状が見られます。更年期障害の症状に似ていると説明する専門家もいます。

バセドウ病は自己免疫疾患

バセドウ病は、自己免疫疾患に分類されています。自己免疫疾患とは、自己の正常な細胞を異物とみなして大量の抗体を作り出すことにより、異常に刺激してしまう病気です。

バセドウ病の場合は、甲状腺が異物とみなされ、甲状腺を刺激するTSHレセプター抗体が産生されます。これによって甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、新陳代謝が活発になりすぎて、身体に様々な不具合が生じてしまうのです。

なぜこうしたことが起こるのか、原因はまだ完全には解明されていません。

バセドウ病の検査と治療

バセドウ病の検査は、甲状腺ホルモンの量やTSHレセプター抗体の存在を調べる血液検査と甲状腺の形や大きさなどを調べる超音波検査の二つが中心になります。検査結果がでるまでに1週間〜10日程度かかる場合もありますが、検査自体は1日で済むことが多く、苦痛のない検査です。

バセドウ病の治療は、薬物療法が第一選択肢となります。定期的に行なわれる血液検査をもとに、甲状腺ホルモンを抑える薬を中心として、血液中の甲状腺ホルモンの量をコントロールしていきます。治療の過程で甲状腺の腫れはおさまり、耐えられないような自覚症状は緩和されていきます。薬物療法は長期にわたりますが、苦痛をともなうものではありません。医師の指示に従って山疋期的に通院し、正しく薬を服用すれば、支障のない普段どおりの生活を送ることができます。

薬物療法だけでは症状が改善されない、あるいはそれ以外の治療を望まれる場合には、放射線療法(アイソトープ治療)や手術療法が選択できます。

放射線療法は、放射線を直接照射するのではなく、放射性ヨードの入ったカプセルを飲むだけのものです。放射線治療を受けたあと一定期間は、ヨードを含む食品に対する食事制限があります。基本的には、前述の薬物療法と併用して行なわれます。

手術療法は、甲状腺の大部分を切除する方法です。他の治療法よりも短期間での完治が期待でき、病気の再発も少ない方法ですが、入院が必要となります。

これらの治療法は、病状や年齢、身体的条件、ライフスタイルに対する考え方で、それぞれ「適する・適さない」といった面もあります。医師からの説明をよく理解した上で、治療を受けるようにしましょう。

バセドウ病の誤解

「女性の300人に一人」といわれるほど、バセドウ病は女性に多くみられます(注‥バセドウ病は女性だけでなく、男性も罹る病気です)。

妊娠出産に関連してバセドウ病では、早産や流産、胎児への影響に、いくつかの誤解が生じています。

バセドウ病に躍っていながら治療せず、妊娠出産を迎えた場合は、確かに相応の危険性がともないます。しかし現在では、バセドウ病の治療法は大幅に進歩しているので、適切な治療を受けていれば、かなりの部分でリスクを回避することができるのです。バセドウ病への誤解で、妊娠出産を避けることがないようにしましょう。一つ注意したいことは、バセドウ病の場合、妊娠中は治療方法が変わってきます。妊娠出産を予定している方は、あらかじめバセドウ病の検査を受けるようにしてください。

 

−すぐに役立つ暮らしの健康情報−こんにちわ 2013年7月号:メディカル・ライフ教育出版 より転載

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