こわいウイルス性肝炎
最も多いC型肝炎 E型 汚染された食物から 
 
 肝臓の病気で最も多いのがウイルス性肝炎です。中でもC型肝炎は一時的な急性肝炎から慢性肝炎となる確率が高く、肝硬変や肝臓がんへと進行することもあります。またE型肝炎は感染力は弱いのですが重症になりやすく、最近になって国内でも固有の発生源があることが分かりました。今回はこの2つのタイプの肝炎を取り上げてみました。
【肝炎の原因と感染ルート】
 肝臓は代謝機能(栄養素を体内で使えるような形に変える機能)や胆汁の分泌、アルコールその他の解毒など、人が生きていくために欠かせない重要な働きをしています。その肝臓に炎症が起こる病気が肝炎です。原因は酒の飲み過ぎや薬物などによることもありますが、もっとも多く見られるのが「肝炎ウイルス」によるものです。亡くなる原因となる肝臓がんや肝硬変の80%以上が肝炎ウイルスによる、と考えられています。
 C型肝炎はC型ウイルスに感染している人の血液が他人の血液内に入って感染するため、感染源のほとんどが手術や輸血、注射針の共用など、過去の医療行為によるものでした。現在では検査の精度が高くなったため、血液の安全性は一段と向上し、輸血などから感染する心配はありません。
 E型肝炎は経口感染で、E型ウイルスに汚染された食べ物、水などの摂取により感染することが多い、とされています。日本やアメリカでのE型肝炎患者の大半はE型肝炎が多くみられる開発途上国に滞在したのち、帰国してから発病することが多いため「輸入感染症」と認識されてきました。しかし最近、海外へ渡航歴の無い発病例もみられ、感染経路はよく分かっていません。国内産の生肉(野生の鹿の肉や、市販されていた豚レバーの一部など)からの感染の可能性が示唆されています。
【C型肝炎の症状と治療】
 C型肝炎の罹患者は全国で200万人といわれますが、その75%150万人は自覚のない感染者です。つまり自分ではC型肝炎ウイルスを持っていることに気付いておらず、従って医療機関にもかかっていないのです。その理由は「沈黙の臓器」とも呼ばれる肝臓は元来、丈夫な臓器であるためウイルスに感染しても重症になるまで自覚症状が現れないからです。一般的に症状が重いとされる急性肝炎でも、倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐、発熱といった症状がある程度なので「過労かな」「カゼかな」といった具合に見落としてしまう
【急性肝炎の主な症状】
・発熱
・食欲がない
・だるい
・尿が黄色
・白目や肌が黄色くなる
こともあるのです。ただ、肌や白目の部分、尿の色が黄色くなる黄疸は肝臓の病気に特有の症状です。黄疸はすぐ病院で受診しましょう。C型肝炎ウイルスに感染しているかどうか、は採血検査で分かります。
 C型肝炎ウイルスに感染すると2〜16週間の潜伏期間を経て急性肝炎を発症します。ほとんどの場合、一過性のもので入院し十分に栄養を補給し安静にしていれば治ります。症状が軽ければ自宅療養で済むこともありますが、高熱が出たり黄疸の症状があれば自宅療養は無理で医師に経過をみてもらうことです。慢性C型肝炎に移行した場合は悪化を防ぐため、早めの治療が必要です。現在のC型肝炎の治療は「インターフェロン療法」が主流です。予防はあくまで感染している人の血液に触れないことです。
 E型肝炎の治療法は急性期の対症療法のみです。劇症化した場合は血漿交換や人工肝補助治療法、肝臓移植といった特殊な治療が行われることになります。予防はウイルスに汚染された飲食物を摂取しないことです。
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