タバコが招く 肺気腫
肺胞が減っていく 完治は不可能な病気です
 いま、喫煙者に高い確率で発症している「肺気腫」と「肺がん」。特に肺気腫が中高年層で増加していることはあまり知られていないようです。健康を保持して長寿を全うするための重要課題に挙げられている「禁煙」ですが、その危険が明らかにされているのに、まだまだ楽観視されているようです。恐い病気「肺気腫」を取り上げました。
◎慢性閉塞性肺疾患
 肺の中には沢山の仕切り壁があり、仕切られている一つひとつの部屋は肺胞と呼ばれます。肺はこの肺胞の集まりです。「肺気腫」とはこの肺胞の仕切り壁が破壊されて肺胞同士が融合してしまい、その数が減っていく病気です。肺気腫が進行すると肺のガス交換の効率が低下し、身体に必要な酸素を十分に供給出来なくなり最後には呼吸不全に陥ります。また肺気腫の特徴や原因は「慢性気管支炎」と共通する点が多く単独で診断されることが稀なほど、肺気腫には慢性気管支炎を伴っているケースが多くみられます。このため、病気の性質上、両方を含めて「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」とも呼ばれます。
正常な肺胞 肺気腫(小葉中心型)の肺胞
※小葉中心型肺気腫は、喫煙が原因となる肺気腫のタイプによくみられます。
 
◎どんな症状?
 細胞が破壊された肺は弾力が無くなり、伸び切った風船のような状態になります。肺胞の壁に張りめぐらされた毛細血管は減って、血液を通して酸素と二酸化炭素のガス交換が出来なくなります。つまり呼吸の効率が低下して空気中の酸素だけでは呼吸が困難になり、ひいては酸素吸入をしながら生活することになってしまいます。一方、弾力が無くなって吸い込んだ空気をうまく吐き出せなくなった肺は樽のように膨張していきます。この結果、肺の下にある横隔膜を押し上げ、さらに心臓も圧迫して心疾患などを併発します。
自覚症状
@軽い運動をした後でも息切れしやすい
A慢性的にセキ、痰が続いている
B息を吐き出す時に口をすぼめる
C風邪をひくと呼吸が困難になる
D満腹状態になると息苦しく、次第に痩せてきた
◎原因は?
 肺胞が破壊される原因はハッキリと解明されていません。ただ、肺気腫患者の90%が喫煙者といわれ、個人差はあるものの、罹患率はタバコの本数や喫煙歴に比例しています。肺気腫はタバコの害が顕著に示される疾病の代表と言えるでしょう。また、先天的に肝臓で作られるタンパク質分解酵素を抑制する物質が欠乏しているケースがあり、この場合はタンパク質分解酵素によって肺胞が侵され肺気腫が発症します。でも日本人には稀なケースです。肺気腫は60〜70歳代が多く、加齢による肺機能の低下も病気の進行に影響しています。ただし、肺気腫は10年から20年といった長い期間にゆっくり進行するのが特徴です。つまり、自覚症状は、出るのは遅くても、実は若い時期から病状は進んでいる、ということになります。
  
◎治療の大原則
 一度壊れた肺胞は再生することは出来ません。つまり完治は不可能な病気なのです。ですから治療はそれ以上の肺胞の破壊を止め、併発している呼吸器異常を改善し、生活の質を少しでも高めることが目的となります。それにはまず禁煙をすることです。理学療法、薬物療法、酸素療法などがありますが喫煙していては回復は望めません。
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