引き金はストレス
腹痛や不快感、下痢・便秘
 忙しく暮らす現代社会では様々なストレスが高じて心身症を発症する人が少なくありません。その身体症状の一つに「過敏性腸症候群」があります。長期にわたって便通異常をきたすため、その苦しみや悩みは大きいものです。そこで1月末に朝日新聞「体とこころの通信簿」欄に載った記事を中心にまとめてみました。
★過敏性腸症候群とは
 受験当日の朝や、大切な会議の前に、急におなかが痛くなり、くだってしまったような時、「よりによって、こんな時に…」と思ってしまいます。このように、腹痛や腹部不快感を伴った下痢や便秘が続く病気を「過敏性腸症候群(IBS)」といいます。IBSは小腸や大腸を検査しても、見た目はきれいで、栄養吸収も悪くないのに、腹痛や不快感を伴って便通異常が起きてしまうのです。下痢や便秘、排便回数の増減が3ヵ月以内に、月に3日以上あって、しかも排便でスッキリするなら、これに当てはまります。  先進国では人口の1割から2割、消化器科を受診する患者さんの約3割を占めている病気、というデータがある位、決して珍しい症状ではないのです。もちろん、放っておいても命にかかわる訳ではありません。ただ、年中「おなかが痛くなるかも知れない」「下痢をしそうだ」など気になり、いつも緊張しながらの生活は辛いものです。しまいには不登校になったり、仕事に悪影響が出たりすることがありますので、早めの対処が肝心です。
  
★原因トップはストレス
 引き金となるもののトップは、やはりストレスです。どうやって、それに気付くか、が改善の第一歩になります。脳と腸の相関を研究している東北大学の福土審教授(行動医学)は「IBSの人には、ストレスを抱えていても、性格的に感情を言葉に出来ない『失感情症』の人が多いのです。まず、自分のストレスを言葉にして、自覚することが大切です」と言っています。うつ状態や不眠もリスクになります。食事も大切です。特に、食べる時間や回数が不規則だと腸の収縮リズムが崩れます。そうなると空腹時に腸が行う清掃機能がうまく働かなくなるのです。この辺について群馬大学の伊藤漸名誉教授(消化管生理学)は「空腹感は『清掃が完了』という合図です。一日一回は空腹を感じることが、おなかの健康を保つ秘訣」と話しています。食物繊維を沢山摂り、刺激物になるトウガラシなどの香辛料やコーヒーを控え目にするのが大切です。
 
ストレスが引き起こす過敏性腸症候群

       腹痛、下痢、便秘
  
★治すには
 過敏性腸症候群は2006年に国際診断基準が改訂され、理解が進んでいます。適切な治療を受ければ生活の質が高められます。受診して、他に病気が無いことを確認した上で、生活習慣の見直しや乳酸菌製剤、抗コリン薬などの薬物を使うかどうか、を相談してみるといいでしょう。必要に応じて抗うつ薬、抗不安剤の併用や心理療法を行うこともあります。最近は、かぜなどの感染症のあと、腸が過敏な性質に変化することが知られてきました。福土教授は「かぜは治ったのに、おなかの不調だけが1ヵ月以上続くようなら、一度、消化器の専門医に相談してほしい」と語っています。  
 なお、過敏性腸症候群と症状が似たものに、大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病など重い病気があります。特に血便があったら必ず内視鏡検査を受けてキチンと診断してもらうことです。治療は一般内科でもいいですが、消化器科、心療内科がより専門的です。
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