ストレス社会と
胃・十二指腸潰瘍

 今の社会はストレス社会≠ネどと言われるほど、仕事や交流関係、家族内でもストレスを起こす原因が数多くあり、それで胃や十二指腸に潰瘍を招く例が後を断ちません。今回はストレスとも深い関連がある、という「胃・十二指腸潰瘍」について探ってみました。

炎症が重なり傷つく 〜ピロリ菌感染や薬剤でも〜
 
◎潰瘍(かいよう)とは
 皮膚や粘膜の一部が深く傷つき、えぐれてしまうことを言います。ひどい場合は組織や臓器に孔があくこともあります。胃や十二指腸の場合は、粘膜に炎症が度重なることで、潰瘍が形成されていきます。(図1を参照)
 
 
◎攻撃因子と防御因子
 潰瘍が出来るメカニズムはまだ完全に解明されてはいませんが、胃粘膜に対して攻撃する因子≠ニ、それを防ぐ因子≠ニの均衡が崩れたときに潰瘍が出来るのではないか、と考えられています。攻撃因子となるのは胃酸(消化酵素ペプシン、塩酸)やヘリコバクターピロリ菌が出す毒素、などです。特に胃酸は胃さえも溶かしてしまう強い消化力を持っているため、胃の粘膜は胃酸を分泌すると同時に粘液を分泌したり、傷ついた粘膜細胞はすぐに修復するなどして、自分を守っているのです(防御因子)。十二指腸も胃酸の影響を受けるため、同じ仕組みで潰瘍が形成されます。
 
◎ピロリ菌の影響
 治療しても潰瘍がなかなか良くならなかったり、繰り返して潰瘍が出来る場合はヘリコバクターピロリ菌の感染が疑われます。ピロリ菌が出す毒素により、胃に慢性の炎症が起こることが分かっています。
 
◎薬剤の影響
 非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)が潰瘍の原因となることもあります。これは薬が粘膜を傷つけたり、防御因子の働きを弱める作用をしてしまうためです。
 
 
〔潰瘍の出来やすい場所・性別〕
 胃潰瘍は一般的に胃角部のあたりに出来やすいが、高齢者では胃底部の噴門の近くにも出来やすい。十二指腸潰瘍は胃酸の影響を受ける十二指腸の始まりの部分(球部)に出来やすい(図2参照)。性別では男性が圧倒的に多く、男女比は3対1になっています。
 
〔症状は〕
 「みぞおちに痛み」と「胸やけ」で、空腹時に起きることが多い。十二指腸潰瘍では夜間に痛むことも多い。さらに、潰瘍が血管を傷つけることで出血が起き「吐血(口から吐く)」「下血(血の混じった便が出る)」が起きます。さらに悪化すると「危険な3大合併症」に進みます。(1)穿孔(せんこう)=潰瘍が進行し胃の壁に孔が空いてしまう。多くは急性腹膜炎を起こします(2)大出血=大量に出血するとショック状態に陥ることもあります。(3)幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)=潰瘍により幽門が狭くなることです。食物の通過障害が起きます。この3大合併症は緊急手術が必要なこともあります。
 
★再発を防ぐために
 胃潰瘍・十二指腸潰瘍はともに一度治っても再発する頻度の高い病気です。再発を防ぐにはストレスを溜めないこと、また喫煙・過労・暴飲暴食など、潰瘍を引き起こす誘因を避けることです。結局、一番の予防法は「今まで心身に負担をかけていた生活を見直すこと」に尽きるのです。
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