甲状腺の異常
 「疲れやすい」「痩せた」「動悸がする」「暑さに弱くなった」「寒がりになった」「便がゆるい」「便秘しやすい」「気力が出ない」といった症状があったら、心臓や消化器の病気か、更年期障害、うつ病などを思い浮かべるかも知れません。でも本当は甲状腺に原因があるかも知れないのです。そこで「甲状腺の異常」について取り上げてみました。
                            (朝日新聞の「体とこころの通信簿」から)
 
ホルモンの過不足で全身に症状が出ます
 甲状腺は首の前面、のど仏の下にある、チョウチョウが羽を広げたような形をした小さな臓器です。その役目は、心と体を元気にする甲状腺ホルモンを分泌しているのです。脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)の働きかけで、甲状腺ホルモンが作られ、血液にのって全身に運ばれます。
 
 
◎異常とはなに?
 この甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺機能亢進症にかかると、新陳代謝が盛んになり過ぎて、常に運動しているのと同じ状態になって体に負担がかかります。脈が速くなってドキドキし、胃腸は盛んに動いているため便がゆるくなったり、汗をかいて暑がりになります。この亢進症の代表がバセドウ病なのです。バセドウ病というと「目が突出する病気」と思われていますが、目に症状が出るのは2、3割で、実は全身の病気なのです。  
 逆にホルモンが少なくなる甲状腺機能低下症にかかると、無気力、冷え、便秘、肌の乾燥などが現れることがあります。原因として最も多いのが橋本病です。
  
◎検査の方法は?
 検査では血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量を調べます。また指で触れたり、超音波で検査したりして甲状腺の腫れぐあいをみます。
 
◎治療はどうするの?
 亢進症はホルモンをつくるのを抑える薬、低下症ではホルモンを補う薬を飲みます。バセドウ病はアイソトープ治療や手術を行うこともあります。治療が遅れると、心臓に負担がかかって不整脈や高血圧になることがあるので要注意です。治らない難しい病気と思いがちですが、必要な時に適切な治療を受ければ普段どおりの生活ができます。ただ、ストレスを溜めないこと、禁煙することが注意点です。
 
◎女性の方が多い
 甲状腺の病気は男性より女性に多く、特にバセドウ病は20歳代や30歳代の女性に多くみられます。見かけは元気そうなので、周りからは病気であることを理解されず、本人も気づかないこともあります。バセドウ病なのに気づかない人が女性で200人に1人、男性では1000人に1人いる、といわれています。女性で気になる妊娠・出産への影響は「きちんと治療し管理すれば、安全に出産でき授乳も可能です。無用な不安や間違った思い込みをしないように」と東京都予防医学協会の百渓尚子内分泌科部長はアドバイスしています。
  
トップページへ戻る