南東北 2009年2月



加齢ともに増える「前立腺肥大症」

尿道圧迫で排尿困難に|薬で改善、ひどければ手術も
 「尿が出にくい」「勢いがない」「夜間のトイレ回数が増えた」といった排尿の悩みを訴える男性が加齢とともに増えています。その原因の多くはオトコの宿命の病¢O立腺肥大症によるものです。高齢社会での共通の話題のこの病気とは・・・。
前立腺とは
 前立腺は男性生殖器の一つで、精液の一部を作る器官です。成人男性では栗の実ほどの大きさ(約20g)ですが、一般に50歳を過ぎたころから、ほとんどの男性が肥大し始めます。この前立腺は膀胱の出口付近に尿道を取り囲むように位置しているため、ここが肥大すると尿道が圧迫されて排尿困難・頻尿といった排尿障害が現れてきます。これが「前立腺肥大症」です。肥大するのは尿道に近い内腺と呼ばれる部分です。医学的に言えば、前立腺肥大は良性の腫瘍です。原因には男性ホルモンが関わっていますが、詳しいことは未だ分かっていません。ただ前立腺がんとは症状はよく似ていますが、別ものです。血液検査(PSA)で区別が可能です。
肥大の症状は?

前立腺構造図

 (1)2時間以内の再排尿(2)夜間の頻尿(3)尿に勢いが無い、の3点が前立腺の3大症状です。1日10回以上、または就寝後に3回以上トイレに起きる、尿が出始めるまでに時間がかかる、といった初期症状にはじまり、次第に「尿が出切らない感じ」(残尿感)を覚えるようになります。さらに進行すると常に膀胱に尿が溜まり細菌感染を起こす、無意識のうちに尿を漏らす、などになり、重症になると尿が腎臓に逆流して腎機能低下(水腎症)、尿毒症にもなりかねません。
検査の方法は?
 肥大がどの程度進行しているか、は検査で分かります。医師が肛門から指を入れて直腸越しに前立腺の大きさ・硬さを調べる(触診)、超音波(エコー)検査、が一般的です。造影剤を使ったX線撮影や尿道から内視鏡を入れる膀胱鏡検査などもあります。排尿後の残尿検査、尿の勢い検査も行います。しかし肥大が即、治療の対象になるわけではなく、治療の可否は自分がどれ位日常生活に支障を来しているか、が大きなポイントになります。
治療の方法は?
 (1)薬物療法:大きく2つに分けられます。1つは排尿障害を改善して症状を軽減します。α受容体遮断薬は前立腺や尿道の緊張を緩和して排尿をしやすくします。抗男性ホルモン薬は男性ホルモンの作用を抑え、肥大した前立腺を小さくします。(2)外科的療法:薬で思うように症状が改善しない場合や、残尿が100ml以上ある、尿閉(尿が全く出なくなる)を繰り返す、といったケースでは手術による療法が検討されます。外科手術には経尿道的前立腺切除術、レーザー切除術、尿道ステント留置法、温熱療法があります。
前立腺がんへの移行は?
 前立腺肥大症はいわば良性の腫瘍ともいえ、前立腺がんとは発症の仕組みが全く異なります。また、肥大症は内腺部が、がんのほとんどは外腺部に、というぐあいに発生する部位・組織は違います。
 ただ、いずれも近年は急速な増加傾向にあり、がんの進行に伴う排尿障害は肥大症によるものと混同されがちです。前立腺がんの早期発見のためにも、50歳を過ぎて排尿に異常を感じたら、早めに専門医の検査を受けましょう。
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