血管内治療ってなに?(上)

体にキズを残さず治療 〜がんの兵糧攻めや薬漬けも〜

 体内の病気を、出来るだけ身体にキズを残さず、やさしく治す新しい治療法「血管内治療」が注目されています。総合南東北病院では4月1日から「血管内治療研究所・総合血管内治療センター」が設立され、毎週火曜日から金曜日まで午前中に、当院に着任した日本IVR学会認定専門医の今井茂樹先生が血管内治療外来診察を開始しています。そこで、血管内治療について今井先生に解説していただきました。

今井茂樹先生

ガンに対する治療法の新たな選択肢
 血管内治療は難しい話しをするとIVR(アイブイアール)と言う分野に入ります。このIVRはレントゲン透視、CT、超音波(エコー)検査を見ながらカテーテルという細い管や針を用いて外科手術なしに、できるだけ身体にキズを残さずに病気を治療する画期的な治療法です。塞がった血管や胆管を拡げたり、出血している血管をふさいで止血したり、ガンを死滅させたり、さまざまな治療を行います。手術を必要としないため身体への負担が少なく、病気の場所だけを正確に治療できます。
 この血管内治療をはじめとするIVRは欧米でも日本でもいろいろな診療科の医師が行っていますが、放射線科医師が最も多く行っています。放射線科医師は画像をもとに診断し、治療を行う仕事をしています。放射線科医師が長年培ってきた能力や技術がこの新しい治療法に生かされています。また、この専門学会として「日本IVR学会」があり専門医の認定を行っています。
 さて、どんな病気に対して血管内治療をはじめとするIVRが有用なのでしょうか?まずガン治療です。
原発性肝臓ガン
 (B型肝炎やC型肝炎などの慢性肝炎や肝硬変から発症する)に対しては直接病変に針を刺してガンを焼ききり死滅させるラジオ焼灼療法(RF・アールエフ)やアルコールを直接注入する治療法(PEI・ペイ)、ガンの細胞が栄養をとりこんでいる動脈にカテーテルという細い管を入れ、ガンを殺す薬を注入したり、血管をふさいでしまう物質を注入する動脈塞栓術(TAE・ティーエーイー)つまり肝臓ガンに対するガンの薬漬け・兵糧攻め治療法。そして高度進行肝臓ガンに対しては持続的にガンを殺す薬を動脈から注入するリザーバー動注療法があげられます。もちろん外科的手術や粒子線治療等も選択肢の一つです。
 肝臓ガン治療に当たっては肝臓ガンの大きさ、個数、どこにあるか、そして肝機能の状態などにより、どの治療法を選択するかが決まります。治療法はどれか一つだけしか選択できないわけではなく状態や経過に応じて何種類もの治療法を組み合わせて行うことも可能です。慢性肝炎や肝硬変から肝臓ガンが発生することが多いために再発することも多いです。つまり1回の治療で完全に治るわけではないと考えて定期的な経過観察が必要になります。
転移性肝臓ガン
 同じ肝臓ガンでも胃や大腸などの他臓器からのガンが肝臓に転移してきた転移性肝臓ガンに対してはガンを死滅させる薬の点滴や飲み薬が有効とされています。しかしながら前述したリザーバー動注療法も有用です。つまりあらゆるガンの肝臓転移に血管内治療は選択肢の一つとなります。
頭頸部ガン(耳鼻科領域の舌や咽のガン)
 手術前治療法としてや放射線療法と併用して、直接病変部位にガンを殺す薬を注入する動注療法が行われます。この手術前にガンを殺す薬を動脈から注入する治療は、手術ができなかった病変を手術可能にすることができるため、頭の先から足の先まで各種のガン(悪性腫瘍)に対して広く用いられています。
 その他、頭頸部ガンからの口腔内や鼻出血、肺ガンからの血痰や気管内出血、消化器ガンの吐血や下血、泌尿器ガンの血尿、子宮ガンの不正性器出血、肝臓ガンや腎臓ガンの自然破裂などのガンからの出血に対しても動脈塞栓術(TAE)で止血可能です。
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