パーキンソン病

高齢になると多く発症

 パーキンソン病とは、進行する神経の難病で国内の患者さんは約15万人いると推定されています。こうした中、「パーキンソン病の遺伝子治療の研究が進められている」というニュースが今年初めに新聞で報じられたので再録します。

(朝日新聞「患者を生きる」シリーズから)

 パーキンソン病は脳の「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部分の神経伝達物質ドーパミンを作る神経細胞が減るために起こる病気で、手が震える、体が硬くなる、動きが遅くなる、バランスがとれない、といった症状が表れます。発症するのは50歳から60歳代以降に多いのです。
 その治療は、数種類の薬を組み合わせて症状を和らげるのが基本となります(表)。中心になるのはドーパミンを補う「Lドーパ」と、ドーパミンの受け皿に働きかけてドーパミンと似た作用をする「ドーパミンアゴニスト」です。Lドーパはよく効きますが、病気が進むと効く時間が短くなり、体が勝手に動くという副作用が出やすくなります。一方、ドーパミンアゴニストは長時間働きますが、吐き気などの副作用が出やすいのです。日本神経学会の治療ガイドラインでは「高齢者(70〜75歳以上が目安)はLドーパから、比較的若い患者さんはドーパミンアゴニストから始める」としています。ただし、薬の効果や副作用の表れ方は人によって異なります。和歌山県立医大神経内科の近藤智善教授は「仕事や趣味などの活動をしたい、という患者さんの希望も考慮して、一人ひとりに合った薬の組み合わせが必要」と語っています。このほか、貼り薬も開発中で、飲み薬より吸収がゆっくりで効果が持続する、といいます。
 外科的治療では、手術で脳に細い電極を埋め込む「深部脳刺激療法(DBS)」があります。Lドーパの効果が弱くなったり、副作用が強くなったりした患者さんが対象で、Lドーパの効果を持続し量を減らせる、などが期待出来ます。そして、さらに遺伝子治療の研究も進められています。我が国では自治医大(栃木県下野市)の中野今治教授らのグループが、ドーパミン合成酵素の遺伝子をウイルスに組み込んで脳に注入する方法を研究しています。Lドーパの働きを良くするのが目的で、2007年から50〜60歳代の男女6人を治療しました。いずれもLドーパを飲みはじめて5年以上経ち副作用が出たり、効果が低くなったりした患者さんたちで「今後、国内外で症例を重ねて、安全性や効果の評価をしていきたい」としています。

「薬で症状緩和」が基本だが遺伝子治療の研究も

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