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脳卒中は寒い冬に発症する、と思われがちですが、意外にも夏を中心に秋にも発症数が多いのです。特に脳の動脈が詰まる脳梗塞は要注意。大量の汗をかくことなどで体内の水分量が減って、血液の粘度が増すことが原因と考えられており、専門医は「水分補給の大切さ」を呼びかけています。(毎日新聞「くらしナビ」から)
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脳卒中とは
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@脳内の血管が詰まる脳梗塞A脳内の細い血管が破れる脳出血B脳内の太い血管の瘤が破裂して起こるくも膜下出血、の3種類に大別されます。国内の脳卒中による死亡は、かつては脳出血が大半を占めていましたが、近年になって脳梗塞が主流を占めるようになりました。
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厚生労働省の人口動態統計によりますと、1960年の調査では脳出血が約77%、脳梗塞は約13%でしたが、45年後の2005年の統計では脳出血は約25%に減り、脳梗塞が約60%に増えて完全に逆転しています。その理由としては栄養状態の改善や住民検診の普及、降圧剤の進歩などによって重症高血圧が減って血管が破れにくくなり脳出血が減ったこと、さらには寒い冬に室温が極端に低いトイレや浴場で脳出血が起きたケースが、住宅事情が改善したことで解消したことが上げられます。こうして血管が破れなくなった一方で今度は血管が詰まる脳梗塞の対策が重要になったのです。
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脳梗塞と季節
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1999年5月から2000年5月にかけて厚生労働省の研究班が全国156病院を対象に「脳梗塞発症者数」を調査しました。この結果のうち、季節との関連では、最も発症患者が多かったのが、なんと夏(6月〜8月)で3292人、次いで秋(9月〜11月)の3262人、多いと思われている冬(12月〜2月)は3210人、春(3月〜5月)は2896人と最も少なかったのです。さらに、脳梗塞の病状に季節による特徴が見られるのです。夏に多いのは動脈硬化を基盤とした脳梗塞ですが、冬に多いのは心室房細動などで心臓に出来た血栓が脳に達して起こる心原性脳塞栓症なのです。「冬はカゼなどの呼吸器感染症のために、血液を固めるフィブリノゲンの影響で血栓が出来やすくなるためではないか」と推測されています。
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そこで、主任研究者の山口武典国立循環器病センター名誉総長は「高齢者の場合、体内の水分量が少なくなっても、ノドの渇きとして認識しにくいので、血液の粘度が上昇し血栓が出来やすくなる」と説明しています。このため「その予防には、こまめに水分補給を」と呼びかけています。大人の場合、1日に必要な水分量は約1.5リットル。食事などで補われる分を差し引いても水やお茶、スポーツドリンクなどで1リットル以上の水分を意識して摂る必要があります。また夏カゼや下痢など、夏場に体調を崩して食事を抜くと水分摂取量が減ります。さらに注意が必要なのが飲酒です。「運動で汗を流したあとのビールでのどを潤す」という人が多いですが、アルコール類は利尿作用があって、むしろ体内の水分を減らす結果になるのです。「ゴルフ→サウナ→ビール、というのは最悪の循環」と医師は指摘します。脳卒中予防の基本は「高血圧の治療と禁煙で危険因子を避け、夏には脱水、冬には感染症を防ぐ」と言えるのです。
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■脳卒中の予防の10カ条(日本脳卒中協会作成)
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- 手始めに 高血圧から 治しましょう
- 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
- 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
- 予防には タバコをやめる 意思を持て
- アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
- 高すぎる コレステロールも 見逃すな
- お食事の 塩分・脂肪 控えめに
- 体力に 合った運動 続けよう
- 万病の 引き金になる 太りすぎ
- 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
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