広報誌 南東北

第221号

夏こそ注意したい脳卒中

 脳卒中と聞いて「寒い冬に高血圧の高齢者が突然、倒れる」というイメージを持つ人が多いかもしれません。確かに間違いではないのですが、実は暑い夏もご用心なのです。少し血圧が高い人や、若い人も気を付けた方がいいようです。その辺を朝日新聞の紙面から探ってみました。
 国内の脳卒中の患者さんは約130万人で、がん、心臓病に次いで死因の第3位にあります。脳卒中とは「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つをまとめて呼んでいます。最も多いのは脳梗塞です。脳の血管が動脈硬化で細くなり、そこに血の塊が詰まって血行を妨げ、体のマヒや言語・視覚の障害を引き起こす原因になります。この脳梗塞は夏も要注意なのです。汗を多くかいて体内の水分が減りやすいからです。水分不足が血液の粘度を増し、血の塊が出来やすくなるとみられます。国立循環器病センターの山口武典名誉総長らの厚生労働省研究班の調査でも夏の患者が多いことが分かっています。
 この調査では1999年から1年間、全国156病院の脳梗塞患者数を聞いたところ、最も多かったのは夏の3292人でした。次いで秋が3262人、冬は3210人、春が2896人となっています。山口名誉総長は「脳卒中予防のため、夏は水分補給をこまめにしてほしい」と呼びかけています。
高血圧は大きなリスク
 高血圧は脳卒中の大きなリスクです。興味深いデータがあります。大阪大学の磯博康教授(公衆衛生学)などが30年間行った調査によりますと、高血圧患者の中で軽症高血圧の患者の比率が上がり、重症や中等症の高血圧患者の比率が下がっていたのです。軽症高血圧とは血圧の上(収縮期血圧)が140〜159、下(拡張期血圧)が90〜99の人を指します。この軽症高血圧の人が増えた結果、脳卒中患者の中でも軽症高血圧の人が増えているのです。茨城県で行った数千人規模の調査では、脳卒中の患者さんのうち軽症高血圧の人の割合が1963年〜71年に26%だったものが、1985年〜94年には36%に跳ね上がっていました。磯教授は「血圧がやや高いという人も減塩やバランスのとれた食事、節酒、適度の運動など脳卒中の予防を意識した生活習慣を身につけてほしい」と話しています。
増える兆しの30歳代
 脳卒中の患者さんは高齢者が大半です。国の2008年調査では65歳以上が8割以上を占めます。ただ30歳代の患者さんが増えている、という指摘があります。中国労災病院の豊田章宏リハビリ科部長は2002年から5年間、36の労災病院に入院した患者さんの年度別動向を調べたところ、30歳代だけが少しずつ増えていたのです。豊田さんは「外食など塩分や脂肪分が多い食生活が若い人の脳卒中を増やしている可能性がある」と指摘しています。

最も多いのは脳梗塞/こまめな水分補給で防ぐ

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