広報誌 南東北

第222号

腎臓の病気

 俗に「肝腎かなめ」と言われるほど、重要な臓器である腎臓は肝臓とならぶ沈黙の臓器≠ナもあります。自覚症状が乏しく、薬物療法も難しいため、悪化してしまうと腎疾患の治療は困難になります。でも、異常を早期発見して進行を食い止めれば、病気と仲良く付き合っていくことも可能なのです。
腎臓のしくみと働き
腎臓は腰の高さの背中側にある、左右一対をなしたそらまめ型の臓器です。大きさは大人の握り拳ぐらいで重さは150g弱です。この腎臓には主に3つの働きがあります。
@尿を作る=腎臓にはそれぞれ約100万個の「糸球体」という濾過装置があって、血液中の不要物を濾過して尿の元(原尿)を作ります。また尿量やナトリウム、カリウムなど電解質の排泄量を調節して体液の濃度を一定に保つ働きもあります。
A血液を作る=エリスロポエチンというホルモンを分泌して赤血球の合成を促進させます。
B血液を調節する=血圧を上げる作用のあるレニンなどのホルモンを分泌します。
健康診断で分かること
 住む地域や職場で実施する健康診断では必ず尿検査を行います。これで微量な血液やタンパク質、糖などが含まれていないか、を調べることが出来ます。血尿やタンパク尿では腎炎など腎臓の機能低下が、尿糖では糖尿病が疑われます。また血液検査の項目のうち、クレアチニンや尿素窒素も糸球体の濾過機能を知る目安となります。1項目でも異常が出たら医師に相談しましょう。
 医療機関では、より詳しい状態を調べるために、尿を細菌培養したり、遠心分離機にかけて沈殿物を調べたり、腎臓の超音波検査(エコー)や、造影剤を静脈注射して行うX線検査、CT、MRIなどが行われます。また、薬品を使って尿の濃縮機能を調べるほか、場合によっては腎臓に針を刺して組織の一部を採取して調べる腎生検が行われることもあります。なお、最近では糖尿病性腎症の早期発見に尿中のアルブミン(タンパク質の一種)の有無を調べる微量アルブミン尿検査が有効とされています。
腎疾患の種類
 腎疾患には、腎臓自体に何らかの異常が発生した場合と、もともと別な持病があって二次的に腎機能が低下した場合、の2種類があります。前者には急性(糸球体)腎炎、慢性腎炎、腎臓がん、腎臓結石などがあり、後者では糖尿病性腎症や痛風腎、高血圧による腎硬化症、膠原病によるループス腎炎などが挙げられます。慢性腎炎も生活習慣病による腎臓疾患も進行すれば、次第に腎機能を低下させます。腎機能が健康な状態の30%程度まで低下した状態を「腎不全」といい、さらに尿量が減少して血液中に老廃物が溜まって「尿毒症」という状態に陥ると非常に危険な状態となります。これを防ぐために行われるのが「人工透析」です。人工腎臓という装置に血液を通して浄化する「血液透析」と、自分の体内の腹膜を利用して行う「腹膜透析」があります。
治療法は
 基礎疾患があれば、その治療を行いますが、腎疾患そのものに有効な薬物はごく少ないため、食事療法および過労・ストレスを避ける生活が大きな柱になります。食事療法は個人により異なりますが「塩分・タンパク質・水分」の摂取制限です。塩分を減らせば血圧が下がり、タンパク質を減らせば代謝で出る尿素も減るため、腎臓の負担が軽くなるのです。

尿・血液検査が重要/自覚症状が乏しく注意を

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