広報誌 南東北

第225号

脳梗塞は減っていない

 脳血管障害である脳卒中は日本人の死亡原因の第3位を占めています。その中でも脳梗塞は最も死亡率が高く、しかも発症率は年々増加しています。発症すると麻痺や言語障害、認知症などの後遺症が残ることもありますが、予防は不可能な病気ではありません。
脳卒中とは
一般によく使われる言葉ですが、これは病名というよりも1つの症状を意味する用語なのです。脳を流れる血管の病変によって脳に機能的・器質的な障害をきたすことを「脳血管障害」と総称していますが、この障害が急激に起きた場合を「脳卒中」と呼ぶのです。卒中とは突然、あたる≠ニいう意味です。この脳卒中は脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞の3つに大別されます。
脳梗塞はこうして起きる
なんらかの原因で脳の動脈の内側(内腔)が塞がれて、そこから先の組織に血液が流れなくなると、血液が運んでいる酸素や栄養分が行き届かなくなり脳の組織が部分的に壊死します。この状態が脳梗塞です。脳梗塞は血管の塞がり方で種類が分けられます。1つは「脳血栓」で脳の血管そのものが動脈硬化を起こし、そのために出来た血の固まり(血栓)が徐々に大きくなって血管を塞いでしまう状態を指します。2つは「脳塞栓」という状態です。これは心臓など脳以外の場所で出来た血栓などが血流に乗って流れて脳の血管に詰まった場合をいいます。脳血栓も脳塞栓も脳細胞が壊死した部位によって現れる症状は異なります。よく知られている症状としては「麻痺」「知覚障害」「失語」などです。また通常の動作が出来なかったり、道に迷う、人の顔が判別出来ない、などの症状もあります。
こんなサインが危険信号
朝起きた時に手足が思うように動かない」、「よだれが止まらない」、「しびれた感じがある」などの症状がみられ、さらに周りの人からも「なんとなく、いつもと違って様子が変だ」と見られるときは脳梗塞の可能性があります。また、脳梗塞の特有の症状として一過性の発作が起こる例も多くみられます。「一過性脳虚血発作」です。脳梗塞と同じ症状ですが、一時的に脳の血管が詰まったり、動脈の強い狭窄によって起こるものです。しかし血栓が自然に溶けたり流れたりして、血管の詰まりがとれて短時間で症状が治まります。程度の違いはありますが、数秒から数分(多くは15分以内)長くても24時間以内に回復します。この一過性脳虚血発作は脳梗塞の大発作の前触れとみられ脳梗塞に移行する確率が高いことが知られています。ですから、症状が治まったといっても、すぐ病医院での検査が必要です。
治療は迅速な対処を
脳の細胞は酸素や栄養分の不足にとても弱く、血流が途絶えると周囲の細胞は15分〜1時間ほどで壊死してしまいます。ですから脳梗塞の治療は一刻も早く開始することが重要です。治療は薬物療法が中心になります。「血栓溶解剤」「抗凝血剤」「抗血栓剤」などの投与を行い、急性期には血管内に注射する方法もあります。総合南東北病院の救急センターで効果を上げている「tPA」がこれです。つまり内科的治療法です。この方法でも途絶えた血流が改善されなかった場合や、太い血管の閉塞などでは手術することもあります。これを外科的治療法といいます。不幸にして半身麻痺や言語障害など機能的障害が残った場合、機能を出来る限り回復させるためには早いうちにリハビリテーションを開始することが大切です。これで完全回復は無理でも日常生活に不自由しない程度まで回復させることも可能です。
予防するには
危険因子を取り除くことです。一番の危険因子は高血圧です。血管に高い圧力が加わるため動脈硬化を起こし、これが脳梗塞の原因になります。同じ理由で高脂血症も重大な危険因子です。さらに糖尿病・心臓疾患(特に弁膜症、不整脈)を持つ人は梗塞を起こしやすいので、こうした病気をキチンと治しておくこと、つまり生活習慣病への対策が予防策となるのです。

前ぶれ「一過性虚血発作」/高血圧・高脂血症が危険因子

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