広報誌 南東北

第232号

増えています、前立腺がん

食事の欧米化が影響

アメリカでは男性が罹るがんの第1位は前立腺がんですが、日本でも近年になってこの前立腺がんが急激に増加傾向にあり、厚生労働省の平成17年度の調査では男性がんのトップになっています。そこで、改めて前立腺がんについておさらいをしておきましょう。
前立腺は男性だけの臓器で、恥骨(骨盤を形成する骨の一つ)の裏側にあって栗の実のような形・大きさです。重さは成人で15〜20gほど。外側は被膜に包まれており、膜の内側には前立腺液を分泌する腺などが存在し精液の一部をつくっています。さらに前立腺の内部は尿道周囲にある内腺と、その周りにある外腺に分かれています。
この前立腺の病気では「前立腺肥大症」と「前立腺がん」がよく知られていますが、肥大症は内腺に発生しやすく前立腺がんは外腺に多く発生します。どちらも腫瘍には違いありませんが、良性の腫瘍である肥大症に対し前立腺がんは悪性腫瘍であることが決定的な違いです。良性と悪性の違いは転移するかしないかで判断します。
様々な種類
他のがんと同様に、前立腺がんにも様々な種類があります。そこで日本ではWHO(世界保健機関)が提唱している分類法によって3つに分類しています。
  1. 高分化型腺がん〈悪性度は軽度〉
    正常よりも、やや小さい腺管が規則的に並んでいるもの。正常な前立腺細胞に近い、おとなしいがん。
  2. 中分化型腺がん〈悪性度は中程度〉
    高分子型腺がんより腺管の配置が不規則。一部に腺管融合が見られるがん。
  3. 低分化型腺がん〈最も悪性度が高い〉
    がん細胞がびっしり詰まった状態で、腺管がほとんど確認できない。
増えている理由
まず食生活の欧米化が考えられます。高タンパク、高脂肪の食事が増え、前立腺がんや肥大症の増加要因になっているといいます。また平均寿命が延びたことによる高齢者の増加も大きな理由の一つです。前立腺がん患者の90%以上は60歳以上であり、がんの発見も50歳を超えてからという場合がほとんどです。男性ホルモンによって支配される前立腺では高齢化に伴う男性ホルモンの影響が病気発症に関係している、と考えられます。検査技術の向上がこれに拍車をかけています。
検査の方法は?
前立腺がんの主な検査には「PSA(前立腺特異抗原)検査」と呼ばれる血液検査や「直腸診」「生検」「画像検査」などがあります。中でも前立腺がんの発見に大きく貢献しているのがPSA検査です。PSAという物質は身体の中で前立腺でしか作られません。前立腺にがんが発生するとがん細胞が沢山のPSAを作るので、血液中にもPSAが流れ出るようになります。ただ、前立腺肥大症や前立腺炎でもPSAの数値は上昇するので、この検査だけでは病気が何か、はハッキリと分かりません。そこで病気があることが疑われる場合は、さらに別の検査、具体的には直腸診や画像検査(MRI・CTの検査など)を行ないます。また、病変を採取して調べる「生検」で前立腺がんであるかどうか、を確定します。ただ、PSA値は前立腺がんが進行するほど高くなる傾向がありますので、これである程度は進行具合を知ることが出来ます。
治療は?
治療法には「手術療法」「放射線治療」「内分泌療法」があり、さらには特別な治療を行なわずに当面経過観察する「待機療法」があります。この中で特に放射線治療の1つとして南東北がん陽子線治療センターでの陽子線治療は大きな効果を示しています。いずれにしても前立腺がんの治療で大切なポイントとなるのは「患者さんの年齢と期待余命(これから先、どれくらい平均的に生きることが出来るか、という見通し)」、最終的には「患者さん自身の病気に対する考え方」です。
定期検診を
前立腺がんは初期には自覚症状がほとんど無いため気付かないケースが多かったのですが、検査技術の向上によって人間ドックなどで早期に発見出来るようになってきています。前立腺がんは早期発見出来れば90%は完治可能と言われています。定期検診をキチンと受けることが肝心です。

発見にPSA検査が貢献

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