広報誌 南東北

第235号

胃と十二指腸の潰瘍を知ろう

攻撃因子強いと発症

「潰瘍」とは皮膚や粘膜の一部が深く傷つき、えぐれてしまうことを言います。ひどい場合は組織や臓器に孔があくこともあります。胃や十二指腸の場合は粘膜に炎症が度重なることで潰瘍が形成されていくのです。
◎潰瘍が出来るメカニズム◎
★攻撃因子と防御因子
潰瘍が出来るメカニズムはまだ完全に解明はされていません。胃の粘膜に対して攻撃する因子と、それを防ぐ因子との均衡が崩れた時に潰瘍が出来るのではないか、と考えられています。このさいの攻撃因子となるのが胃酸(消化酵素ペプシン、塩酸)やヘリコバクターピロリ菌が出す毒素、などです。特に胃酸は胃さえも溶解してしまう強い消化力を持っています。このため、胃の粘膜は胃酸を分泌すると同時に粘液を分泌したり、傷ついた粘膜細胞をすぐに修復して自分を守っているのです(防御因子)。しかし何らかの原因で胃酸が増えてしまったり、粘液の分泌が減ったりすると、あるいは粘膜細胞の修復が遅れたりすると、胃壁は胃酸に曝されて傷つくことになります。十二指腸も胃酸の影響を受けていますから同様に潰瘍が形成されます。
★ピロリ菌の影響
治療しても潰瘍がなかなか良くならなかったり、繰り返し潰瘍が出来る場合はヘリコバクターピロリ菌の感染が疑われます。ピロリ菌が出す毒素により胃に慢性の炎症が起きることが分かっています。
★薬剤の影響
非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)が潰瘍の原因となることもあります。これは薬が粘膜を傷つけたり、防御因子の働きを弱める作用をしてしまうためです。
[症状は?]
胃潰瘍は「みぞおちの痛み」が空腹時に起こることが多いです。十二指腸潰瘍の場合は夜間に痛むことが多く、「胸やけ」も十二指腸潰瘍で起こることが多い。「吐血・下血」も症状のひとつ。潰瘍が血管を傷つけるため出血が起き口から血を吐けば吐血、血の混じった便が出ることを下血と呼びます。真っ黒なタール便が出ることもあります。こうした症状が悪化すると〈危険な3大合併症〉に発展し緊急手術が必要な事態に繋がります。3大合併症とは「穿孔(せんこう)=潰瘍が進行し胃壁に孔があいてしまう。多くは急性腹膜炎を起こす」「大出血=大量の出血でショック状態に陥ることもある」「幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)=潰瘍により幽門が狭くなると食物の通過障害が起こる」の3つを指します


[誘引は?]
  ストレス・過労・喫煙・飲酒・香辛料・熱すぎたり冷たすぎたりする食物・消化の悪い食物、が挙げられます。これらは胃酸の分泌を促進したり防御因子の働きを弱めるため胃・十二指腸潰瘍の誘因になります。とくにストレスは大きな誘因です。そのメカニズムは@ストレスが大脳皮質を刺激するA刺激が大脳皮質から視床下部に伝わるB迷走神経が興奮して胃酸の分泌が増える→攻撃因子の増加C内臓神経が興奮し胃の粘膜の血流が悪くなり胃を守る粘液の分泌が減る→防御因子の減少D胃や十二指腸の壁が胃酸で傷つけられ潰瘍が発生する、という形で進みます。


[検査と治療]
  潰瘍が疑われた場合はバリウムや発泡剤を使ったX線検査や内視鏡検査が行なわれます。がんかどうかを調べるための組織検査を行なうこともあります。治療は〈薬物療法〉〈手術療法〉〈除菌〉があります。現在はよく効く薬が開発されており、治療の多くは薬物療法が中心です。危険な合併症が起きた場合は緊急手術が行なわれます。再発を繰り返す場合も手術が考えられます。治りにくい場合などはピロリ菌の除菌が行なわれることもあります。再発を防ぐにはストレスを出来るだけなくし、生活習慣の改善に努めることにつきます。

ピロリ菌や薬剤の影響も

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