広報誌 南東北

第240号

前立腺肥大症の治療に高効果

当院泌尿器科 最新のレーザー治療開始

総合南東北病院泌尿器科は、このほど「ホルミウム」という最新の医療用レーザー装置を用いた治療を開始しました。対象となる主な病気は、前立腺肥大症と尿路結石症です。従来の治療法に比べ出血量が少なく、入院期間を短縮できます。安全性も高く、患者さんにとっては朗報となりそうです。今回は前立腺肥大症の治療法「HoLEP(ホルミウムレーザー核出術)」について解説します。

当院で導入したホルミウム・ヤグレーザー装置
(写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)
前立腺肥大症とは
前立腺は男性だけに備わる臓器です。膀胱の真下にあり、尿道をドーナツのように取り囲んでいます。クルミほどの大きさです。特にはっきりとした原因はわかっていませんが、良性の「できもの」が増殖して前立腺が肥大し、排尿が困難になる病気です。50歳を過ぎた男性に多くみられます。尿が出にくい、残尿感、夜間もトイレに行く回数が増加する、などの症状が現れます。
前立腺肥大症の治療
症状が軽ければ経過を観察します。症状が強く治療を要する場合、まず薬物治療が選択されます。ただし、前立腺の肥大を根本的に治すことはできないため、症状が改善しない時には手術治療が必要になります。最もよく行われているのは「TUR-P(経尿道的前立腺切除術)」という手術です。内視鏡をおしっこの通り道である尿道から通し、電気メスで尿道側から肥大した前立腺の組織を少しずつ削り取っていきます。この方法では、前立腺を直接切るため出血量が多く、輸血が必要となることもあります。また手術後しばらくの間は排尿時に痛みが残ったり、感染症をおこしたりする恐れがあるため、4〜10日程度入院して経過を見ます。この治療を受けた患者さんの5%は一時的なものも含めて尿失禁となるほか、20〜30%に勃起不全が起こる可能性があると言われています。
最新の手術方法HoLEP
総合南東北病院で導入したレーザーで行うHoLEPは、TUR-Pと比べて出血量が格段に少ないことが特筆すべき点です。治療は、まず柔らかい内視鏡を尿道から通し、レーザーファイバーという機器を前立腺の内腺と外腺の境目にあてます。次にこの機器の先端からホルミウム・ヤグレーザー光を出し、内腺をくり抜きます。この治療法では出血がほとんどありません(図参照)。その上、TUR-Pのような手術後の合併症が起こる可能性が低いことも特長のひとつです。当院泌尿器科の橋本樹科長は「HoLEPは、手術による傷が少なくて済む体に優しい治療法です。高い治療効果が期待できるうえに入院期間が3〜7日と短くて済むのは、患者さんにとって大きな利点です。公的な健康保険も適用されます。前立腺肥大症の症状が改善せずにお困りの方は、外来受診のうえでご相談下さい」と話しています。
尿路結石症の治療にも有効
腎臓や尿管、膀胱に石の結晶ができたり、詰まったりするのが尿路結石症です。発症すると激しい痛みを伴います。当院では、これまで主に行われてきたESWL(体外衝撃波結石破砕術)に加え、今回導入した最新のレーザー装置による治療も開始しましたので、石の大きさや場所にかかわらず、あらゆる尿路結石に対して、確実性の高い外科的治療を提供できる体制が整いました。

 

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