広報誌 南東北

第242号

床ずれのはなし

褥瘡つくらない≠ェ予防

長期間寝たきりや痛みなど知覚障害のある高齢者にできやすいといわれる褥瘡(じょくそう)。圧迫による皮膚の潰瘍で一般的には「床ずれ」と呼ばれます。発症するとなかなか治りにくいだけに予防が肝心です。先月15日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で皮膚排泄ケア認定看護師の同病院看護師長・柴崎真澄さんが講演した「床ずれのはなし」の内容を要約し原因や予防法を学びます。
褥瘡は疾病名。体重の集中する部位の骨と寝具に挟まれた皮膚組織が圧迫され「血の流れが悪くなり、皮膚やその下にある組織が死んでしまう外傷」です。褥瘡は寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人なら誰でも出来ます。できやすいのは腰から下。仙骨部(お尻の中心)坐骨部(座ったときに当たるお尻の両側)、大転子部(横になるときに当たる腰の部分)、かかと、ひじなどですが、耳の下も要注意です。皮膚にちょっぴり赤い斑点ができたりしたら注意深く観察が必要です。
なぜ床ずれが起きるのでしょう。昔は「褥瘡は看護の恥」などといわれました。毛細血管の内圧が32_Hg以上加わると血液の流れは悪くなり、皮膚・皮下組織まで傷つきます。皮膚が引っ張られたり、こすれること、長時間の圧迫とずれ力が褥瘡の最大の原因です。これに加え栄養状態や運動能力の低下といった様々な要因が絡み合います。太っている人よりやせている人の方が骨が出っ張っているため床ずれが起きやすい。高齢者は体が動けないため同じ向き、尿や便など排せつが分からない、おむつを使う、入浴できないなど褥瘡となる要因が多い。皮膚がもろいこともあります。健康な皮膚は角質の水分でしっとりした皮膚を維持、保護機能を発揮するが、便や尿が付き汚れを取るのに擦る、おむつ交換する時間がかかる―などで皮膚がふやけたり、乾燥肌になり傷つき感染を誘発します。たんぱく質・アミノ酸・ビタミンCの摂取不足など栄養の低下も要因と言えます。
そこで床ずれを作らないために皮膚障害の対策が必要です。@皮膚の観察と早期対処A皮膚障害の原因究明と除去です。高齢者の場合は保湿成分が減少。過度の洗浄や長時間入浴、過暖房は乾燥肌になり、おむつを使用し続けると皮膚が蒸れふやけた状態になります。皮膚の手入れは@汚れを微温湯で流すA洗浄剤を十分泡立てるB皮膚に余分な摩擦を加えない。柔らかいタオルで泡を皮膚に付けるC手に泡を取り適当な圧迫を加えて洗うD石鹸が皮膚に残らないよう洗浄する―など。洗浄後は水分を良く拭き取り、保湿剤を塗ることです。
体位を変えてやることも重要です。背面とベッドの接触を解除する背抜き、下腿後面の接触を解除する足抜き、横向きの時枕やクッションを使って30度側臥位にしてやる。足の位置はふくらはぎ全体に枕を挿入し圧を受ける面積を増やす。膝は軽く折り曲げ過進展を予防―などです。
マットは圧を和らげますが、厚さ18oの場合、長期臥床患者さん、13oは活動性の高い患者さんの転落防止などに効果を発揮します。皮膚が赤くなっていたら指で押して白くなったら圧迫での発生です。体の向きやマットを変えてやります。炎症がある場合は薬の処置が必要。落ち着かず、赤みが広がったままなら病院受診が必要です。「褥瘡は基礎知識と人間愛があれば十分に防げる病気」といわれますが、何よりも床ずれを作らないことが最重要でチーム挙げての観察とケアが最大の予防といえます。

皮膚のケア、適切な体圧管理を。栄養不足チェックも

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