広報誌 南東北

第243号

トップは渡邉理事長が講演

24年度医学健康講座開講

総合南東北病院が開催している医学健康講座が今年度も4月19日から開講しました。トップは恒例により渡邉一夫理事長が講師で「切らずに治す最新の放射線治療とロボット手術〜低線量放射線被ばくと人体の影響について」と題し講演しました。渡邉理事長は、がんの早期発見・早期治療の重要さや放射線治療で切らずに治せる時代を迎えていること、今後導入が期待されるホウ素中性子捕捉療法などを分かりやすく説明しました。講演の要旨を紹介します。
呼吸によって体内に取り入れられた酸素は代謝の過程で酸化力が強い活性酸素を作り出す。活性酸素は殺菌や解毒作用など重要な働きもするが、過剰になると正常な細胞を傷つけてがんや動脈硬化、循環障害、老化の原因になる。お焦げや日焼け、たばこ・酒の飲み過ぎはがんになりやすいなどというが、運動のし過ぎや食べ物、放射線、紫外線、ストレス、炎症、アスベスト、感染症なども活性酸素を過剰に発生させる因子で、これらが重複すると発がんリスクが高まる。何でも過ぎるのはダメ。適度がいい。カリウムを含む食べ物は活性酸素が多い。野菜はいっぱい食べたほうがいい。人が一年間に自然界からを含め被ばくする放射線量は平均2.4_Svといわれる。
高線量、低線量とは何か。放射線量がどの位かだ。政府の発表がはっきりせず不安を煽ったが、医療関係者は年間100_Svまでとされる 。それ以下が低線量。脳腫瘍治療のときは放射線を瞬間的に一回60_Gy、ガンマナイフの時は30Gy照射する。瞬間に7000_Svも浴びたら一カ月以内に死んでしまう。たばこを毎日20〜30本一年間吸うと4000_Sv被ばくと同じだ。なぜ放射線治療のときは大丈夫かというと、照射するのは数_から大きくて1a位だから。がん細胞のDNAの鎖を断ち切るため子孫ができなくなる。低線量被ばくならDNA損傷は数日で修復される。生体には防御能力があり、同じ線量でも分割照射なら障害の程度は小さい。
チェルノブイリと福島が違うのは、チェルノブイリは放射性ヨウ素の被ばく線量は最大2000_Svでヨウ素を含む牛乳が出回った。福島はヨウ素被ばく線量は0.1マイクロSv、ヨウ素を含む牛乳も即規制され出回っていない。甲状腺がん患者が約7000人、死者が数人出たのに対し福島では現在、死者も患者も実態は分かっていない。18歳以下の医療費を無料にするなどして健康調査を徹底すべきだ。
国際原子力防護委員会勧告による線量限度は従事者被ばくが100_Sv(5年間)、一般は1_Sv。放射線や生活習慣によるがんリスクは、1000〜2000_Svだと1.8倍、たばこ・毎日3合の飲酒は1.6倍、200〜500_Svや運動不足、肥満などは1.2倍といわれる。CT検査など通常のCT被ばくだけではがんにならない。微量放射線により増殖促進が見られ早く傷を治すホルミシス効果という説もある。
日本人の死因トップはがん。毎年65万人ががんにかかり半分が死亡している。早期発見、早期治療が重要だ。放射線治療は年々進化、陽子線治療だと切らずに治せる。
ブドウ糖の性質を利用してがんを見つけるPET(陽電子放射断層撮影装置)検査では、一度に全身のがん検査ができ、ミリ単位のがんやリンパ節転移の診断が可能だ。PETで診断し内視鏡や陽子線で治療すれば普通の手術のように癒着の心配がない。QOL(生活の質)を確保でき患者さんの負担を軽減できる。南東北グループではPETを5台導入しているが、8月川崎市に開院する新百合ヶ丘総合病院にも2台入れる予定だ。
脳腫瘍や機能性疾患、血管障害などにはガンマナイフが最適。陽子線治療は従来の放射線治療と違って正常細胞を傷つけずピンポイントで照射できる。南東北がん陽子線治療センターでは開設3年で頭頸部や肺がん、前立腺がんなどすでに1500件弱治療している。今後、導入が期待されるのがホウ素中性子捕捉療法(BNCT)。現在は京都大や筑波大が臨床研究の段階だが、総合南東北病院では5年以内に民間で世界初の導入を目指して計画中だ。BNCTは放射線治療よりさらに副作用が少なく再発がん、正常細胞とがん細胞の混在するがんにも効果を発揮する。一回の照射で完了する事ができ高齢者など弱者にやさしい治療法だ。
また最近、ダビンチと呼ばれるロボット治療も注目されており、全国の34施設で導入されている。前立腺や子宮摘出、胃切除などに使われるが遠隔操作なども可能なことから更に導入が進むだろう。
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