広報誌 南東北

第244号

前立腺疾患も早期発見・治療

45歳過ぎたらPSA検査

加齢に伴い尿の悩みや障害を抱える中高年者が年々確実に増えています。男性は前立腺肥大症や前立腺がん、女性は頻尿、失禁などがその典型です。5月17日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院長代行で泌尿器科の深谷保男先生が講演した「前立腺疾患と女性排尿異常の予防と治療」の内容を要約し予防法などをおさらいします。
前立腺疾患はいろいろあるが、今回は主に前立腺肥大と前立腺がん、女性の頻尿や尿失禁などをお話します。前立腺は男性だけにある精液をつくる臓器。膀胱の真下にあり成人ではクルミ程の大きさになる。
代表的な疾患が前立腺肥大症と前立腺がん。前立腺は尿道を挟むようにあり前に恥骨、後ろに直腸があるため肛門から指を入れ直腸の壁越しに触ることが出来る。肥大症はゴムまりみたいに硬く、がんは石のようにゴツゴツしている。前立腺の外側はしっかり被膜に包まれ内側に前立腺液を分泌する腺がある。内部は尿道の周囲にある内腺とその周りにある外腺に分かれ、肥大症は内腺、がんは外腺に多く発生する。どちらも腫瘍に変わりないが肥大症は良性、前立腺がんは悪性。肥大症は中が大きくなり尿道を塞ぎ尿がすぐ出ない、切れが悪い、夜中に何度もトイレに起きるなどの支障が起きる。がんの場合はあまり尿道を圧迫しないので初期にはよく分からない。判断はPSA(前立腺特異抗原)の血液検査で分かる。
肥大症の治療は薬か手術。治療薬にはα1遮断薬や肥大症を縮小させる薬がある。新薬にアボルブという薬があるが副作用も少なく男性ホルモンを上げ、回復例も多い。
手術は内視鏡で前立腺の肥大した部分を削り取るTURPという手術が一般的。肥大が大きい場合は開腹手術で対応していた。最近レーザーを使って削り取るホーレップ(ホルミウムレーザー前立腺核手術)という新しい内視鏡手術法が開発され昨年暮れ当院でも導入した。郡山と青森にしかない。腹を切らずに手術できる患者に優しい手術で尿管結石など結石にも有効だ。
わが国のがんは肺、胃、前立腺の順に多いが、前立腺がんの増加が著しく近い将来、胃がんを抜くかもしれない。早期発見、早期治療が大事だ。
先述のPSAは腫瘍マーカーとして一番正確。定期検査で他への転移も画像診断より早く判断可能。基準値は4以下。値が100超なら確実に前立腺がんで大半が骨に転移している。検査料は約2千円。45歳過ぎたらぜひPSA検査を。泌尿器科以外でもOKだ。
PSA10以下ならがんはゆっくり進行する。2〜3回計って生検しがんの場所を特定するが、PET検査では1回で全身のがんが分かる。PSA値が2〜3000だと骨に転移し大半が1年以内に死亡するが、気長な治療で元気になった人もおり、あきらめないで治療してほしい。
前立腺がんの治療は薬の内分泌治療、手術、放射線の3つ。薬は有効だが根治ではない。手術は10日位で早く、確実で料金も安いが、神経を切り勃起しなくなる例が多い。
放射線治療は外照射と内照射があるが、当院ではIMRTと陽子線を使い分けている。ピンポイントで治療する陽子線は約3年半で177症例のほぼ全例が良好(6例が膀胱や直腸への浸潤)。治療に8週間、約300万円かかるのが短所。再燃前立腺がんでは抗がん剤なども併用する。前立腺がんの予防は難しい。やはり早期発見・早期治療だ。食品ではカルシウムや乳製品、肉、たばこはリスクを上げ、コーヒーや魚、野菜などはリスクを下げる。和食がいい。運動もいい。父親や兄弟等が前立腺がんならリスクが高い。
さて女性の排尿異常だが、泌尿器はじめ骨盤内の臓器を支えている骨盤底筋がゆるむと尿が漏れやすくなる。排尿異常には尿を十分貯めることができない畜尿症状、排出がうまくできない排尿症状がある。尿意切迫感や頻尿、尿失禁などの症状を過活動膀胱というが、過活動・切迫性尿失禁は抗コリン薬などが有効だ。若い時は膀胱が柔らかく尿3〜400t貯められるが、加齢により硬くなり収縮して急に尿意をもよおし、トイレに行くまでに漏れてしまう例が多い。新しい治療薬にミラベクロンという交感神経β3作動薬がある。県立福島医大が開発した薬で閉経以後の女性に有効だ。くしゃみや咳、大声で笑う、重い荷物を持ち上げる-などお腹に力が入ったとき起こる女性特有の腹圧性尿失禁も交感神経刺激剤スピロペントや女性ホルモン剤が良く効く。これらの対処策として骨盤底筋を鍛える体操がある。1日に50〜100回やると効果がある。薬や体操で改善が見られない場合には尿失禁の手術が有効だ。
最後に夜間頻尿だが、高齢者の方や脳血管障害、虚血性心疾患の既往のある人は脱水症状、熱中症になるから水分取れて言われ水を取り過ぎている例が多い。頻尿の原因は水分の取り過ぎ。こまめに取るのはいいが適量は1日に750tぐらい。当院では毎週水曜日に泌尿器科外来で女性専門外来をやっており、気軽にご相談下さい。

骨盤底筋体操も有効、頻尿・失禁、水分摂り過ぎに注意

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