広報誌 南東北

第245号

BNCT30年度開始目指す

病院で世界初のがん治療装置

一般財団法人脳心疾患研究所(渡邉一夫理事長)が計画中の「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)によるがん治療機器の開発・実証計画」が福島県の国際的先端医療機器開発実証事業費補助金に採択されました。平成26年度に臨床試験、同30年度に治療開始を目指します。病院でBNCT治療を行うのは世界で初めて。

BNCT装置の一部。加速機器「サイクロトロン」
BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)は、エネルギーの低い中性子とがん細胞・組織に集積するホウ素化合物の反応を利用してがん細胞をピンポイントで破壊する最先端の放射線がん治療法です。正常な細胞への影響を抑え、外科手術やX線治療では難しい再発がん、進行がんにも有効とされています。
補助金は国の平成23年度第三次補正予算を活用した医療関連産業集積プロジェクト補助金の一環。昨年3月の東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興、医療機器産業の振興を目指し開発困難な先端医療機器の研究開発や実証試験などを支援するものです。県は総事業費約68億円のうち4年間で43億円の補助を決め、6月21日に発表しました。
BNCTの研究は京都大が5年前から住友重機械工業と共同開発、同大原子炉実験所で治療の有効性や安全性を確認する作業を進めています。
同研究所の実用化までの計画では、早ければ今秋にも郡山市八山田にある南東北がん陽子線治療センター西に延べ床面積約6000uの建屋を建設。京都大が住友重機と共同開発し間もなく実際の患者を対象に臨床試験(治験)を開始する段階にある「サイクロトロン」という加速器を用いたBNCT装置を導入します。治療計画システムなどの開発は京都大と筑波大、効果的な薬剤の開発などは東京理科大に委託する予定です。安全性や性能向上試験を経て平成26年度後半から治験を開始、薬事申請の手続きを経たうえで同30年度には厚生労働省が認定する先進医療としての治療開始を目指します。
昨年3月の東電原発事故で福島県内に住む県民たちは健康への不安を抱えて生活していますが、こうした状況の中で難治性の再発がんや進行がんに有効とされるBNCTの実用化を世界に先駆けて取り組むことは世界のがん治療患者にとっても朗報と言えます。また治療を求める患者とその家族らが国内外から本県を訪れるようになれば地域経済の活性化にもつながると考えます。新しいがん治療法の実用化を目指し本県の復興と医療の発展に貢献します。

県が開発実証費補助採択

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