広報誌 南東北

第246号

トレーニングの進化とパラドックス

進歩するスポーツ科学

◎強まる精神論は人間回帰?◎
高校野球福島県大会が終わり甲子園本大会を待つ間にロンドン五輪が開幕。スポーツに携わる者には文字通り熱狂の夏になりそうです。
さて私が青春を過ごした時代はまさにスポーツ科学、運動生理学の黎明期。発展途上にありました。運動中の水はご法度、一切飲ませてもらえませんでした。当時の運動指導の象徴だったうさぎ跳び。最近はさすがに見ることがなくなりました。球場に足を運ぶと多種多様のストレッチを駆使し、スポーツドリンクを携行する選手たちに隔世の感を覚えます。
そんな中、テレビを見ていて面白いことに気付きました。スポーツにおける科学や医学がめざましく進歩する中、解説者がこぞって発言する「最後は精神力」「どれだけ勝ちたいと思うか」などスピリチュアルな表現です。トレーニングが科学に裏付けられ、選手がフィジカルレベルやテクニックを研ぎ澄まし、勝負を紙一重で争うほどにその傾向は強くなります。このパラドックスは大変興味深い。つまり人々は科学の粋を集めたロボットのような選手に感動するのではなく、不完全な人間が1人1人の「精神」に支えられ「完全」を目指す一編の物語に共感し涙を流すのです。金メダル至上主義の中、それをほっとする人間回帰の傾向と感じてしまう私は現代の指導者失格かもしれません。
(エルフィットチーフトレーナー 仲田貴之 郡山市八ツ山田3-8-3 Tel:024-991-1045)
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