広報誌 南東北

第251号

脳動脈瘤を知る

突然くも膜下出血起こす恐い病気 早期診断と治療が大切

ある日突然、破裂してくも膜下出血という恐ろしい病気を引き起こす脳動脈瘤。血管のこぶができただけでは何でもありませんが、こぶをよく知っておく必要があります。12月20日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で渡辺善一郎副院長が講演した「脳動脈瘤について」を要約し、その対処法を学びます。




◎小型ほど破裂リスク低い 定期的な画像フォローを◎
脳卒中は脳血管障害でくも膜下出血のように血管が切れる出血系と脳梗塞のようにつまるものと2通りある。わが国の死因は平成23年ではがんがトップ。2番目が心疾患、3番目に脳血管疾患と肺炎がほぼ並んでいる。昭和30〜50年代は脳血管疾患が断然トップだったが、治療法が進み死亡は減少、来年あたりは肺炎に抜かれるだろう。ただ患者の総数は約130万人で、がん140万人とほぼ似た数だ。
脳卒中で何が一番多いかというと脳梗塞が63.9%、脳内出血が24.8%、くも膜下出血が11.7%、その他が3%だ。このくも膜下出血を引き起こす脳動脈瘤とは脳の血管にできる「血管のこぶ」。脳の表面にはたくさんの血管が走り、太い幹から細く枝分かれして脳組織に血液を送っているが、普通はその太い枝分かれの部分にこぶができる。人口の2〜6%の人が脳動脈瘤を持っているといわれる。
原因としては生まれつき脳動脈の壁に弱い部分があり、そこに長年血流が当たることで膨らんでくるという説が有力。遺伝は分かっていないが、親子や兄弟に脳動脈瘤がある人は脳動脈瘤ができやすいことが分かっている。
くも膜下出血の原因の85%は脳動脈瘤の破裂で約5%が脳動静脈奇形、約10%は原因が分からない。症状は突然、バットで殴られたような激しい頭痛と表現され、吐き気や嘔吐、首が硬くなったりする。高齢の人はあまり頭痛がなく、まれに風邪や消化器系の痛みと間違えるケースもある。重症かどうかは5段階に分け、意識の度合いで手術適応を判断する。脳動脈瘤の治療目的は今後破裂しない状態に予防すること。意識昏睡の場合は手術しない。
治療法は手術で開頭し動脈瘤を金具ではさみつぶすクリッピング、足の付け根から細いカテーテルを動脈瘤の中に誘導、プラチナ製コイルを積めるコイル塞栓術がある。塞栓術はここ10数年、普及が著しい新治療法で患者さんの負担が軽いため増えている。
治療時期は発症4日以内か2週間後がよいが、最初の出血量が多いと脳表面の血管が狭くなる「脳血管れん縮」が起こりいろんな後遺症につながることもあり得る。それだけ予後が悪いため@脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は早期診断と治療A完全に回復するのは20〜25%。その他後遺症もあり得るB再出血予防が特に重要―だ。
未破裂脳動脈瘤も成人の4〜6%が有する危険性の高い病変。ある調査では破裂の可能性について関与する因子は@大きさは7mm以上A部位は脳の真ん中B不規則な形C瘤の数は1つが多いが複数あるD高血圧・喫煙・1度出血が起きた人E家族にくも膜下出血の人がいる―など。もし未破裂脳動脈瘤と言われても脳がダメージを受けたわけではない。@まず落ち着く。発症前で方針決定までの時間はあるA大きさ、部位、形によっては治療を勧められることがあるが、主治医とよく相談するB小型のものは破裂リスクが低い。定期的に画像フォローを受ける―が大切だ。
トップページへ戻る