広報誌 南東北

第254号

緩和ケア知ってますか

がんの人の気持ちを和らげる

年間300万人が発症、わが国の年間総死者の約3割を占める「がん」。医療技術の更なる進展は無論のこと、疾患に直面し苦痛や不安を抱えた患者や家族の心と身体のサポート強化が望まれます。先月14日に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の宮元秀昭呼吸器疾患研究所長・緩和ケア委員長は「がんの人の気もちを和らげる」と題して講演し、緩和ケアの対処法をアドバイスしました。
◎患者・家族のQOL向上 いつでも、どこでも、質の高いケアを◎
がんと言われた時多くの患者さんは何かの間違いでは、早期なの・手遅れなの、どんな治療法があるの―などとショックのようです。でも私たちは納得してもらって治療を始めなければなりません。
病気はもちろん家族のことや子どもたちの生活、食生活や医療費の問題など病気と関係ないことまでも心配で苦痛で大変つらいと思います。抑うつ状態の人の自己表現は憂鬱、寂しい、孤独感、生きていく希望がない、死にたい―など様々です。家族も同じだと思います。若い人や神経質な人、独居老人などがうつになりやすいようです。ここまでは病気ではありません。
気もちのつらさが重症化したのがうつ病、不安障害です。難治がんの診断や再発など「悪い知らせ」は治療意欲を奪い、生活の質を低下させ、最悪の場合自殺につながるなど悪影響が大きい。難治がん患者は年間52万人、再発・進行がんが300万人、積極的抗がん治療の中止が32万人で、うち4〜7%がうつ病といわれます。がん患者のうつは全身倦怠感や食欲不振など身体症状ががんの症状なのか、治療の副作用か、うつの症状なのか鑑別が難しい。周囲も「終末期だから落ち込んでいるのだろう」ぐらいに思いがちです。疼痛などで睡眠障害も生じやすく、抑うつ気分や興味・関心の減退なども手がかりになるし注意したい。
うつ病は神経伝達物質のドパミンが足りなくなるがんよりつらい病気。病気だから治せます。それよりも「がんになってもうつにならない」努力が大切。死にたいという「希死念慮」の二次症状が起きる前の段階での治療が重要だ。がん診断後5カ月以内の自殺は一般の4.35倍、女性、50歳代に多いといわれ、そこで緩和ケアが大切になります。
がんの人の話をよく聞き、ストレスをなくしてやることが肝心。死にたいと言ってる場合は精神科医へ相談下さい。
緩和ケアは「死にゆく人」へのケアから始まったが、苦痛を予防し緩和することで患者と家族のQOL(人生・生活の質)を改善する取り組み、治療法です。がんの人の気持ちを和らげるため睡眠を予防・治療・ケアに役立てましょう。身の回りの手伝いや移動の手伝いなど体力温存の手助けをする方法もあります。
日本の緩和ケアは平成19年にがん対策基本法ができ「誰でも、いつでも、どこでも」治療が受けられるがん診療拠点病院が整備されました。昨年からの新5カ年計画ではがん検診受診率向上と喫煙率の低下、働く世代や小児がん対策、緩和ケアの配慮などが盛り込まれ、在宅療養でも緩和ケアが受けられます。がん治療の目標は治癒、予後延長とQOLの向上で緩和ケアもQOL向上で一致。何時でもどこでも切れ目のない質の高い緩和ケアを受けることが大切です。悩まず相談下さい。がんと闘う人に「頑張れ」は禁句です。「(私が)頑張ります。(あなたは)大丈夫」と言いましょう。大丈夫の中には人が3人います。(以上要旨)
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