広報誌 南東北

第243号

渡邉理事長がトップ講演

25年度医学健康講座開講

総合南東北病院が毎月開催している医学健康講座が今年度も4月17日から開講しました。トップは渡邉一夫理事長で「ガン医療について」と題して講演しました。この中で渡邉理事長は医療技術や治療薬開発などの進化を分かりやすく解説しながら低い検診率を指摘、何よりも早期発見・早期治療ががんに打ち勝つ方策だと強調しました。講演の要旨を紹介します。
がんは昭和56年にわが国の死因第1位となって以来増え続け、今では3人に1人ががんで亡くなっている。生涯のうちがんに罹る可能性は男性が2人に1人、女性は3人に1人と推測され、日本人にとって「国民病」といっても過言ではない。人口が28万人減ったが、65歳以上は増えており、がんも今後10年ぐらい増えるだろう。歳をとると細胞が老化し突然変異を起して抵抗力(免疫)が弱くなり、がんになりやすい。でもがんはある程度防げる。タバコを吸わないとか、PM2・5や黄砂を避けるなどだ。九州は脳梗塞が多い。黄砂のせいともいわれる。酒飲んですぐ赤くなる人は食道がんになりやすい。すぐ赤くならない人の70倍という。それにタバコを1日20本以上吸ったらその300倍。タバコは絶対悪い。 日本では毎年65万人ががんに罹り、その半分の32万人が死亡している。胃がんは余り増えていないが、粘膜にできた早期がんなら内視鏡で治療出来る。50歳過ぎたら胃カメラ検診。がんの検診率はまだまだ低い。厚労省の調べでがん検診の受診率は男性の胃がん、肺がん、大腸がん受診率が3割程度、女性は乳がん、子宮がんを含め5つの検診とも2割台前半。特に子宮がん、乳がんは欧米の受診率70〜80%に比べ極めて低い。 がんの50%以上は治る時代≠ノなってきた。胃や前立腺、子宮体・子宮頸、乳、大腸がんは5年生存率が60%以上。肺がんは早いほど治る。子宮がんは予防注射で7〜8割大丈夫。前立腺もPSA検査で分かる。特に1度に全身を見られるPET(陽電子放射断層撮影装置)は、ミリ単位でがん、リンパ節転移などが9割近く分かる。普通のがん検診では千人に1人程度だが、PETだと20〜30人は見つかる。一番多いのが甲状腺で次いで肺がん、大腸がん、乳がんなどの順。この段階で治療すれば死亡率も下がる。がん治療には手術、抗がん剤、放射線療法があるが近年、医療技術の進化は著しい。中でも放射線治療の進歩はめざましく当院は平成20年10月に日本の民間病院で初の南東北がん陽子線治療センターを開設。「切らずに治せる陽子線治療」を始め、今年3月末までに1916人を治療した。頭頸部が最多で肺、前立腺、食道がんなどと続く。進行舌がんなどは舌やあごを切らずに動注化学療法を併用するなど独自の工夫を実施。肺など動く部位を追跡しながら照射できるサイバーナイフはじめガンマナイフなど先端医療の提供体制も整えている。さらにがん治療の質を高める究極の治療としてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)があるが、当院は国から43億円の補助を受けて導入を決定。今年3月初め陽子線治療センター西でBNCT研究センター建設に着手した。加速器で発生させた中性子を照射、ホウ素化合物を取り込んだがん細胞だけをピンポイントで死滅させる。対象は脳腫瘍や頭頸部、肝臓、肺、皮膚がん、中皮腫、骨・軟部肉腫などで難治・再発がんに効果ある。こうした施設は民間病院では世界初。平成30年度には治験を終え、認可を得て治療開始する予定だ。このようにがん医療技術は進化しており、検診を徹底してがんを早く見つけ、早く治療すればがんに打ち勝てる時代を迎えつつある。
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