Spotlight
「陽日の郷 あづま館」女将鈴木美砂子さん
 
高原の風と古の湯の神の恵み
健康と旅への誘い
 
 健康志向の旅が人気を集めています。自分の健康は自分で守りたい、そんなセルフケアの意識も浸透してきているようです。今回は「PETがん健診ツアー」にいちはやく取り組み、当財団のPETがん健診と高原の出で湯「岳温泉」での宿泊を合わせた旅のかたちを提案し、さりげないおもてなしの心で安らぎと癒しを供する「陽日の郷あづま館」の女将、鈴木美砂子さんにお話しをうかがいました。
           あづま館にて。取材当日は小雨模様だったが、窓から
           はさすがにスケールの大きな高原の風景が広がる

岳温泉、お湯の恵みと変遷
 日本百名山の一つ、安達太良山。その麓、標高約600メートルの高原に岳温泉はある。歴史を遡れば9世紀の文献にも記載のある名湯である。周辺には樹々の緑が広がり、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
 岳温泉は今年、復興100周年を迎える。そもそも岳温泉は、古くは「陽日温泉」と呼ばれ、栄えていた。「陽日の郷あづま館」の名前の由来でもある。
「岳 温泉はこの陽日温泉と、その後の十文字岳温泉、深堀温泉に続く四度目の移転地に当たります。けれども湯元はいずれも鉄山下の湧泉で、いにしえの昔と同じ湯の神の恵みを受けてまいりました」
 陽日の郷あづま館の女将、鈴木美砂子さんはそう話してくれた。
 安達太良山に連なる鉄山の南斜面、安達太良登山に利用される「くろがね小屋」の周辺にかつての「陽日温泉」はあった。薬効豊かな湯治場として当時はなかなかの賑わいをみせていたらしい。けれども江戸時代、大規模な土砂崩れで崩壊してしまうと、当時の二本松藩は新たに引き湯の技術を用いて少し離れた安全な場所に十文字岳温泉を開かせた。
 「こうして復興した温泉は元禄年間の『諸国温泉効能鑑』で、東北では最高の温泉と讚えられるほどでした」
 けれどもこの温泉も明治維新の渦中に焼失し、後に復興された深堀温泉も大火のために全焼、現在の地に岳温泉として復興されたのが明治39年のことである。それから100年の歴史が経った。
「昔は自然治癒力を高める温泉療法が大切な医療でもありました。何度も温泉が失われてしまったのですが、そのたびに再生されてきたのは、そうしたお湯の力が大きかったのだと思います。今、健康志向ということで、岳温泉もいろいろな面で注目をいただいておりますが、酸性緑ばん泉という全国的にも珍しい泉質、温泉の力はやはりかかせません。
 幸いなことに岳温泉は国立公園の中の温泉ということで、自然環境がそのまま保たれてきました。乱開発もありませんでしたし、全国的に見てもこうした温泉というのはなかなかない、と思います」
写真は左から、陽日の郷あづま館外観、同ロビーラウンジ、隣接する東三番館夕景。
安達太良山は高村光太郎の「智恵子抄」でも知られているが、その麓にある岳温泉は周辺観光の拠点でもある。「陽日の郷
あづま館」は岳温泉を代表する老舗旅館で、建物は森をテーマに設計された。館内には、作家C.W.ニコルの妻、音楽家のニコ
ル麻莉子が「あづま館」のために作曲したBGMが流れる。

引き湯の魅力
 岳温泉の特長の一つが「引き湯」である。元湯に湧き出る温泉は管を通して東に約8キロ離れた岳温泉へと運ばれるのだ。こうした引き湯の技は全国にもほかに例がない。そればかりか、この「引き湯」は温泉を適温に保つために大切な役割も果たしている。
 通常であれば源泉はそのまま温泉に引かれる。ところが、源泉の温度は一定ではないため、お湯が熱ければ水を入れ、温ければ湧かして適温にするところが多い。けれども岳温泉では「引き湯」の量を加減することで、この調整が行われる。そのため、源泉の成分がそのまま湯船を満たすことになる。
「NHKテレビの『ふだん着の温泉』でも先日ご紹介いただきましたが、岳温泉ではこのお仕事一筋の方に湯守りをしていただいております。赤松の管を流れるお湯の量を加減しながら、お客様にとって一番適温になるように湯温を調整するのです。豊富な経験がないとできません。
 湯守りが仕事をすると湯船のお湯が湯の花で乳白色に変わります。お客様もそうした風情に感心されておられるようです」
 引き湯にはもうひとつの働きがある。「湯揉み」の役割である。一般に温泉は固いものだが、引き湯をすることでそれが解消される。
 「管の中を流れながら適度に揉まれたお湯は優しく角が取れています。『柔らかでまろやかなお湯ですね』とお客様に喜んでいただいております。旅慣れたお客様ほどそうした感想を持たれるようですね。真冬でも身体の芯からあたたまり、心と身体を癒してくれます。
 あづま館では日帰り入浴や立ち寄り入浴もご利用いただけますから、少し足を伸ばしてお出でいただければ幸いです」
日本情緒溢れる庭園には木の香りが爽やか檜づくりの露天風呂も。泉質は全国的に珍しい酸性緑ばん泉。皮膚病、神経痛、
リウマチ、疲労回復、貧血などに効能があり、美肌効果も期待できる

新鮮な野菜は無農薬 環境にも優しいおもてなし
 岳温泉は環境や食についての意識も高い。地域が一体となって循環型農業を実現しているのだ。これまで焼却処理されていた食品の余り物を有機肥料として再利用し、有機野菜を栽培する。
 「近くにある農場の方が意欲的に有機農業に取り組まれていたこともあり、行政と岳温泉の旅館も協力しあって実現しました。無農薬の有機野菜ですから、体にも優しく、環境にも優しい。手間はかかりますが、お陰様で安心して食べられるものをお客様に提供させていただいております。旬のものですから新鮮で、味わいも格別です」
 心遣いは環境や食にも及ぶ。森の緑に包まれて鳥のさえずりを聞きながらゆったりと時間を過ごす。食事も水もおいしい。
 「お湯の力と森や自然の持つ癒しの効果、有機野菜をはじめとする安全な食、爽やかな風と緑を楽しむ心地よいウォーキングなど、誰もがすこやかな旅をお楽しみいただける高原のリゾートとして、さりげなく行き届いたおもてなしを心がけております」



食事に使われる野菜は環境リサイクルで作付けされた無農薬有機野菜や旬の地の物。前菜の「歳時記玉手箱料理(右上)」は有機野菜と山菜など岳温泉ならではの季節の味わいを盛り込んでいる。「古代米カレーと有機野菜ジュース(右下)」は古代の赤米と新鮮な有機野菜を使用、自然な素材の味わいが人気
PET健診や治療にあたられるお客様に 癒しの宿としてご宿泊いただければ幸いです。
メディカルバカンスという 新しい旅のかたち
 「メディカルバカンス、というのは、当館のツアープランをお手伝いいただいている旅行代理店『ワールドツアーズ』様が考えられた新しい言葉です。これまでにない旅のイメージが湧いてくるようです。南東北医療クリニック様でのPET健診と当館での宿泊を合わせた旅のご提案…。健康志向のこうした旅のかたちは、これからはもっと増えていくかもしれません。
 何かの記念日などを利用して、高度な最先端医療機器を使った健診を受け、ご自身の体の状態と向き合い、ご夫婦やご家族でゆっくりと休養をお楽しみいただく。人生の節目として、生活習慣や健康を見直すよい機会になると思います。そうした時間をお客様が持たれる上で、当館が少しでもお役に立てればと考えております」
 PET健診を行なう南東北医療クリニックからの送迎は、あづま館が行う。クリニックの部屋に前泊することもできる。がん健診というとどうしても構えてしまいがちだが、「高原のホテルで気分もよく、やさしい温泉に癒されて、とても気持ちの良い時間を過ごすことができた」という感想も多い。
折しも、一般財団法人脳神経疾患研究所では世界有数のがん治療拠点となる陽子線治療センター≠フ建設が始まった。すでに海外からの問い合わせも増えている。
 「がんの治療にあたられるお客様にも快適にお過ごしいただけるのではないでしょうか。自然環境の良いところでお泊りいただき、ゴルフをし、ウォーキングをしながら、おいしいものを食べていただきたいと考えております。外来での治療から帰ってこられたら、病のことは忘れて、自然を楽しみ、体を動かして、リフレッシュしていただく。精神的な面でも良い方向にいくのではないでしょうか」
 がんは早い段階で見つける。治療も早期に着手し、白い壁に閉ざされた部屋ではなく、自然のなかで心と体を休ませながら、直していく。メディカルバカンス≠ニいう、新しいがん健診と治療の姿が見え始めてきた。

客室「東雲」。清潔な和の空間が落ち着きと
安らぎを与えてくれる。
高原で日頃の運動不足を解消 ウォーキングの愉しみ
 安達太良山といえば登山が有名だが、最近ではトレッキングやウォーキングを楽しむ方が増えている。特にウォーキングは生活習慣病の予防や体質改善の観点からも注目され、中高齢者のファンも多い。自分に合ったペースで気軽に取り組めて、運動不足を解消できる点が嬉しい。
 心地よい風を感じて森林浴を楽しみながら、ゆっくり散歩するだけでも効果はあるが、折角なら健康を意識した本物のウォーキングを学んでみたい。岳温泉では健康増進型のウォーキングプログラムを含んだ「ウェル×ヘルス×ウォーキング」を提唱し、33の起伏に富んだコースを整備。ウォーキングトレーナーも配置する。講習、指導を含んだ「月例ウォーキング」のほか、春、秋のシーズンを中心に多数のウォーキングイベントも開催する。
 とりわけ、モスクワ五輪競歩金メダリスト、ハートヴィッヒ・ガウダー氏(ドイツ)が考案した「パワーウォーキング」への取り組みは本格的だ。
 ガウダー氏は43歳で心臓移植手術を受け、自分自身の健康のためにこのウォーキング法を考え出した。
 腕の振りを強調した、少し力の入った速い歩き方で、心拍数を管理しながら歩く。ガウダー氏を招いての講習会も開催し、コース設定やプログラミングにあたっては福島大学の監修を得た。体育理論に裏打ちされたウォーキングと温泉、有機野菜などのクーリング効果を利用し、健康増進につなげようとする取り組みは、温泉や森林浴のリラクゼーション効果とともに、岳温泉の大きな魅力となっている。


  
「陽日の郷あづま館」の魅力
 あづま館は和風温泉旅館と本格的リゾートホテルの長所をあわせ持つ上品な宿。コンセプトは「高原の社交場」。ここに集う人に高原リゾートの豊かな気分を味わってほしい、という思いが込められている。
 クリスマスディナーでのクラッシックコンサートや、テノール歌手などを招いた音楽会なども定期的に催され、夕食後は開放的なロビーラウンジで、専属ピアニストの生演奏を楽しむこともできる。
 コンベンション会場も充実。今年4月には社交ダンスの専門ホールもオープンした。
 現代的なジャグジーやサウナも備え、男性、女性ともに、本格的なオイルエステも楽しめる。館内にはフィットネスクラブもあり、屋内温水プールも利用できて好評だ。
 近くにはゴルフ場もあり、自然に囲まれた高原のリゾート気分を心ゆくまで満喫できる。
あだたら高原岳温泉 陽日の郷 あづま館
〒964-0074 福島県二本松市岳温泉1の5
0243-24-2211
http://www.azumakan.com
PETがん健診ツアー お申込・お問合せは上記「あづま館」か
下記旅行代理店まで
「ワールドツアーズ」 0276-20-4740
「三越トラベルセンター」 03-3274-8742
「日経旅行鞄経カルチャー」 03-5259-2660
「潟Xターヴィジョン」 042-352-3121
  
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