PET健診 最前線レポート@  
最新の画像診断と各種検査を駆使したがん検診と治療の現在を知る
米国ではPET First(まずはPETから)が常識です。
 
 PETはがんを早期に発見できる機器として注目を集めています。検査面でも多くのメリットがありますが、保険適用が認められていることからもわかるとおり、医療現場、特にがん治療のさまざまな場面においても大きな効果を発揮します。このコーナーでは数回にわたって、一般財団法人脳神経疾患研究所のPET健診と治療の実際をレポートしていきます。
はじめに
 がんは我が国の死亡原因の第1位であり、怖い病気であることは否定できません。けれども医学の進歩にともない、確実な早期発見・早期治療によって、”不治の病”ではなくなりつつあります。
 PET検査は今まで発見しにくかった小さながんを高い確率で見つけ出すことができる画期的な検査方法です。これに他の診断機械や検査方法を組み合わせることによって、より正確な診断を行い、がんの早期発見につなげることが可能となっています。米国では腫瘍が疑われると「PET First(ペット・ファースト)」、すなわち「がんの疑いがあればまずPETの診断を」というのが常識とされるほど普及しているのです。
 ただし、米国では医療費が高額なこともあり、実際に症状が疑われる段階で初めてPET検査に臨むのが一般的。日本のように症状が現われない段階で早期発見に利用し、同時にほかの病気の検査までをも幅広くカバーするような健康診断型の検査は普及していないようです。
 人間ドックをはじめ、自分の体は自分で守る、というセルフケアの意識が高い日本では保険が適用されるPET検査もあり、PET健診は今後ますます普及していくことでしょう。早期発見、早期治療は、がんで死なない時代をもたらすかもしれません。

現在考えられる 究極のがん検査体制
 がんが恐ろしいのは、他へ転移したり、治療後に再発してくる場合があることです。
 PET検査では一度に全身のチェックを行うことが出来るので、こういった転移したがんの発見にも力を発揮します。
 また、腫瘍細胞がブドウ糖を集める量(がんの活動量)と、病巣から検出する放射線の量は相関するため、がん細胞の悪性度も映し出してくれます。
 しかし、検査薬18FーFDGを用いるPET検査も、すべてのがんで役立つわけではありません。この薬は腎臓を経て尿に排泄されます。したがって、腎臓や膀胱にがんがあっても、分かりにくいのです。前立腺癌でも膀胱との区別が容易ではありません。これらがいわゆる”PETが苦手とするがん”です。そのため、他の検査方法と組み合わせることでがん発見の精度を高めます。
 また、肝臓癌、胃癌、前立腺癌は超音波検査や内視鏡検査などの方が、PET検査より有用なことも多いようです。
 2004年、日本核医学会と臨床PET推進会議は共同で「FDGーPETがん検診ガイドライン」を作成しました。これは、PETの検査水準を維持し、その有効性を評価していくためのもの。ガイドラインでは、PETはどの程度有効なのか、より確実にがんを検出するためにはPET以外にどのような検査を併用すべきなのかをがんの部位別に指摘しています。

多発性転移がんの
PET画像
 一般財団法人脳神経疾患研究所のPET健診も、もちろんこうしたガイドラインに沿うものです。PETをはじめとする最先端画像診断装置を駆使し、がん発見のベストの検査方法を組み合わせた、現在考えられる究極のがん検査体制と言えるでしょう。
 具体的な検査項目は、下記に掲載した画像診断と、肝機能検査、肝炎ウイルス・感染症検査、糖代謝検査、脂質・尿酸検査、腎・膵機能検査、血液一般検査、炎症反応検査、電解質検査、腫瘍マーカー検査、尿検査、甲状腺機能検査などの血液・尿検査があります。
 このシリーズでは、こうした健診の中身について、順次詳しくご紹介してまいります。

PETがんドッグ(Aコース)画像検査について
【PET】
 頭部から大腿部上部までをPETカメラで撮像し、腫瘍や炎症を発見する検査です。検査薬ブドウ糖を静脈注射し、糖代謝の活発ながんを画像として捉えます。短時間の検査で苦痛のないのが特長です。また、PETーCTとは、PETとCTの撮影を同時に行える最新機器。
【MRI】
 頭部と腹部・骨盤部を撮像します。PETでは描出されない良性疾患や、PETでうつりにくい悪性疾患をみつけるために行います。また、PETは形や位置の診断が苦手なので、これを補います。脳や生殖器などの観察には、CTより優れています。
【CT】
 頚部〜骨盤部まで撮影します。MRIと同じようにPETを補う検査でもあります。肺などの観察にはMRIより優れています
【胃仮想内視鏡】
 色調がわからず、胃液の影響で死角があり、実際の内視鏡に比べると劣りますが、胃の粗大病変の有無を観察します。
【エコー】
 肝臓や胆嚢はPETやCT、MRIに比べて、エコー検査が優れている部分があります。肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓などを主に観察します。
 
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