PET健診最前線レポートB
早期発見によって確実に前進するがん治療の現在と未来
究極のがん治療法 陽子線治療とは?
 がんは“不治の病”と怖れられてきましたが、科学技術の進歩にともない、その治療法も変わりつつあります。今回は2008年、南東北がん陽子線治療センターに導入される陽子線治療とはどのようなものか、ご紹介したいと思います。
早期発見の持つ意味
 がんは早期発見が大事だと言われています。がん発生のメカ二ズムが自分自身の体内の細胞分裂の際の突然変異にあることから、早い段階、つまりがんが成長する前に対処(治療)すれば治癒の可能性が高まるわけです。実際にがんが1cm以下で発見された人の救命率では80〜90%に達しています。
 どうすれば早期に、小さながんを発見できるか。さまざまな方法が考えられてきましたが、現在では画像診断がめざましい進歩を見せています。特にPETは一度に短時間で全身をチェックでき、がんの悪性度も映し出してくれるため、転移の有無の判断にも利用されています。これにMRI、CTや腫瘍マーカー検査などを組み合わせたものがPETがんドックで、健診型のがん検査として定着してきました。
苦痛や副作用を抑えた新しい治療法の導入
 医学的に効果が認められるがんの治療方法には手術、抗がん剤、放射線治療があります。残念ながらそれぞれにどうしても副作用があるのが現状ですが、南東北病院では、すでにメスを入れずに脳の奥の病巣を治療するガンマナイフなど、体に負担の少ない治療法や機器の導入を進めており、その究極のものが陽子線治療です。
 陽子線治療とは、陽子(水素原子から電子を除いた原子核)を用いた『粒子線治療』のひとつです。シンクロトロンと呼ばれる加速器で、陽子を光速近くまで加速して、がんに照射します。
 病巣に的を絞ってピンポイントで狙い撃ちできるため、正常細胞を傷つけず、副作用を極力抑えられるとともに、大きな治療効果が得られ、理想のがん治療として実用化が待たれてきたものです。正確に腫瘍の大きさや位置を見極める画像診断と高精度の照射を可能とするテクノロジーの進歩がもたらした究極の治療法とも言えるでしょう。
陽子線治療装置の主加速器シンクロトロン
回転ガントリー 回転ガントリー照射室 マサチューセッツ総合病院
陽子線治療の特長
 陽子線の特長はある深さにおいて最大の作用をすることにあります。そのために周辺組織に影響を及ぼさず、がん病巣を焦点化して十分な線量を照射する治療が可能となるわけです。
 実際の照射は1〜2分程度。不快感や苦痛もまったくありません。通院で治療できるというメリットもあり、仕事を続けながら、あるいは1ケ月程度の長期休暇で心身をリラックスさせ、ゴルフを楽しみながら治療にあたることもできるのです。これまでのがん医療のイメージとはまったく違った治療風景が見られるようになるかもしれません。
 粒子線照射の有効性が確認されている代表的な疾患は、前立腺がん・肝がん・食道がん・肺がん・頭蓋内病変・頭頚部腫瘍および眼腫瘍などです。いずれの疾患も外科手術や従来の放射線では治療が難しかったものです。
【陽子線治療の特長】
・正常組織への損傷が少なくなります。
・放射線の影響を受けやすい器官の近くにあるがん細胞にも照射できます。
・患者様の負担が減ります。高齢者にも優しい治療法です。
・治療後の社会復帰に支障をきたさない治療法です。
 現在、この陽子線と重粒子線を総称する、いわゆる粒子線治療が行われているのは、兵庫県立粒子線医療センターなど、わが国で6カ所にすぎません。『南東北がん陽子線治療センター』は国内7番目の施設であり、民間では初めての導入となります。また、東北では唯一の施設であり、東日本におけるがん治療の中心的施設として期待が寄せられています。
『南東北がん陽子線治療センター』の全体イメージ
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