PET健診 最前レポートG
飲酒・喫煙との関係が指摘されている食道がん。
転移しやすいので、早期に発見することが大切です!
 
食道がんを知る[Part1]
その検査と診断について

 
 わが国では1年間に1万人以上が食道がんにかかっています。男性と女性の比率は約6対1。男性では7番目に多いがんです。年齢的には50代から増加し、60歳代が最も多く、70歳以上の方が全体の3割以上。患者さんの平均年令は約64歳です。死亡者数は2003年で約1万1千人。治療のためには早期発見が第一。PET(ペット)でがんの広がりや全身への転移の有無を同時にチェックすることも大切です。
食道がんとは
 食道は口と胃の間をつなぐ管のような臓器です。壁の厚さは4mm程度で消化機能は持たず、ものを飲み込むと、壁が順次に動いて胃に運びます。
 食道がんの原因は明らかではありませんが、飲酒、喫煙、熱い飲食物の嗜好などとの関係が指摘されています。また咽頭、口、喉頭、舌などのいわゆる頭頸部がんと重複しやすいようです。
 日本人の食道がんのほとんどは扁平上皮がん。最も内側の粘膜上皮から発生し、やがて外膜に向かって発育進展していきます。食道がんのうち、深さが粘膜下層までのもので、リンパ節転移のないものが早期がん。食道がんがさらに進むと、食道の壁を貫き、ついには気管、大動脈、肺、心臓など周囲の臓器に広がっていきます。
 一方、がん細胞はリンパ管や血管に入り込み、別の場所で新たに増え始めることがあります。“転移”と呼ばれる現象です。リンパ液の流れに乗り腹部や首のリンパ節で増殖し、腫れてくるのがリンパ節転移。血液に入り込んだがんが肺、肝臓、骨などの臓器に転移することもあります。
PET検査では、原発巣のほか、
リンパ節や他臓器などへの転移の
有無を一度にチェックすることができる。
写真は多発性転移がんのPET画像
症状と進行のステージ
 食道がんの症状は進行状態によって異なります。症状のない段階でも、健診や人間ドックで20%近くの食道がんが見つかるようです。代表的な症状は、食物がのどにつかえる感じ、違和感、しみる感じで、これらが初期症状。がんが大きくなってくると、固形物がつかえるようになり、最後には水もだ液も通らない状態になります。
 一般にがんの進行状況を表わすものとしてステージ(病期)がありますが、これはがんの大きさ、悪性度に応じて、進行の度合いを0〜W期に分類するものです。分類の定義はがんの部位ごとにも異なりますが、0期はごく初期の微小ながん、T期は早期がん、U〜V期が進行がん、W期が末期がんとされ、進行が進むほど治療成績は悪くなります。
 食道がんでは、がんの深さ、リンパ節転移、あるいは臓器転移の有無が重要な指標となり、治療計画を立てる上でも、とても重要です。食道がんの病期は、一般に下の図表のように分類されています。
 
0期 きわめて初期で、がんは粘膜に止まっています。
T期 がんは粘膜より浅い層に止まっており、しかもリンパ節やほかの臓器に転移はありません。
U期 がんは筋層よりは浅いものの周囲臓器にはまだ浸潤がない。ごく近くのリンパ節のみに転移がある場合を含む。
V期 がんがすでに筋層を貫いている。近くのリンパ節に転移がある。
W期 他の臓器に転移があります。この場合がんの深さやリンパ節転移の有無は問われません。
食道がんの検査と診断
 食道がんの診断にはまずX線(レントゲン)による食道造影検査、内視鏡検査、超音波内視鏡検査、CT検査、PET(ペット)検査などが行われます。
 X線検査と内視鏡検査は食道がんの存在を確認し、大きさと位置、形状、深さを知ることができ、一般的な診断に用いられています。内視鏡検査では、がんの病変部がヨード液(ルゴール液)で染まらない性質を利用して、がんの判別に役立てます。疑わしい部位は生検、つまり2mmほどの小片をつまんでがん細胞の有無を顕微鏡で調べ、診断を行います。
 がんの存在が確認されると、次にがんの進行度を検査します。
 がんの深さを調べるには、CT検査や超音波内視鏡検査が用いられます。CT検査は、周囲の臓器への広がりを検査するのにも役立ち、リンパ節転移の検査にも用いられます。
 さて、PET検査は食道がんにも有効です。食道がんは、いわゆる“転移しやすいがん”でもあり、特に肺、肝臓、骨などの臓器に転移しやすいとされています。ところが、転移は体の至るところに起こりますから、原発巣を検査すると同時に、リンパ節やほかの臓器への転移を一度にチェックするPET検査の有用性が指摘されます。これはPETの特長のひとつでもありますが、大腸がんは初期の自覚症状が出にくいがんでもあり、CTなど、ほかの検査を組み合わせたPET健診を利用するなどして早期発見することが重要になります。
 早い段階で治療に着手することで治る確率も変わってきます。次号掲載予定のPET健診・最前レポートHでは、食道がんの治療法についてレポートしてみたいと思います。
(この記事は、愛知県がんセンターのホームページ「がんの知識・予防」の食道がんに関する記事の一部を参考にしてまとめております。)
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