森の癒しの効果
フォレストセラピー
 
今から体の準備をして春の森を訪ねてみましょう。
 森林浴を兼ねた森の中のウォーキングやトレッキング。里山の散策も楽しいものです。ゆっくりと深呼吸してみたり、運動不足の足腰を動かしてみる。体中で森や自然を感じる心地よさは言葉では表せないほどです。
 こうした森や自然のリラックス効果は、これまでもよく知られてきましたが、介護やリハビリテーションの視点から新たな取り組みが始まろうとしています。「フォレストセラピー」と呼ばれる活動です。その中身には、森林の地形や自然を利用した医療やリハビリテーション、カウンセリングなどが含まれ、森林浴、森林レクリエーションを通じて健康の回復や維持、増進をはかるものです。
 ウェルネス(健康生活)の先進国ドイツでは、こうした森林療法が昔から活用されてきました。その代表がクナイプ療法と呼ばれるもので、クナイプ医師連盟が調査・設計を行なった2キロから10キロの森林散策コースが、ドイツ全土に64ヵ所もあり、社会保険が適応されているそうです。
 今回は、日本でもこの「フォレストセラピー」に本格的に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献しようとする動きをご紹介したいと思います。
健院L-CUB(エル・キューブ)と福島県がタイアップ
介護予防やリハビリ効果を探る試み
 全国でもまれな今回の試みは、南東北グループ施設の「健院L-CUBデイ」と福島県とのタイアップによるモデル事業として行われました。「フォレストセラピー」が介護予防やリハビリテーション効果に結びつくとすれば、福島県内で約1000億円に上るといわれる介護保険料の圧縮にも大きく貢献するものとして、県も大きな期待を寄せているのです。
 総合南東北病院リハビリ科の調査によると、介護保険の利用者は、普通の高齢者に比べて極端に歩行量が少なく、その閉じこもりが要介護度の悪化の原因ともなっているとのこと。回復には、歩行能力に加えて、生きがい、役割、行動変容が重要である、と指摘しています。
 昨年10月30日に行われたモデル事業では、日頃パワーリハビリテーションを行っている要支援・要介護者の皆さんと、県職員、県の医師、総合南東北病院スタッフら約20名が参加。「県民の森・フォレストパークあだたら」を舞台に、気持ちのよいひとときを過ごしました。
 プログラムは、最初に血圧・脈拍の測定、ストレスチェックなど、参加者の健康状態をチェックしたあと、セラピートレーナーである森の案内人とともに森林を散策。森がもたらす癒しの効果を心ゆくまで体感しました。参加された皆さんからは、「疲れたが、森を歩いて自信がついた」「昔を思い出して癒された」「森林を歩くと病気のことを忘れる」「もっと歩く練習をして、また参加したい」など、大変好評だったそうです。
 今回の結果は県と南東北グループで共有し、各研究大会などで発表されるとのことですが、介護やリハビリの世界だけに限らず、私たちの健康生活にとっても、貴重な情報を提供してくれるはず。寒い冬が過ぎたら、気持ちのよい春の森を訪ねてみたくなります。
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