陽子線治療をめぐって@
体内の見えないがんを映し出すPET検査が治療に果たす役割
 
新しい時代を迎えたがん≠フ診断と治療について
 究極のがん治療とされる陽子線治療にとっても欠かせないのがPET(ペット)検査。がんの早期発見ばかりではなく、がん治療の効果を判定するためにも重要な画像診断装置だ。陽子線治療とPET検査が切り拓く新しいがん医療の世界とは…。全国を縦断して開催されている「陽子線市民公開講座」でも取り上げているPET検査の意義について、陽子線治療センターの広報を担当する櫻井祐美さんにお話をうかがった。 
  南東北がん陽子線治療センター 広報マネージャー
櫻井祐美さん
 
陽子線治療とPET検査
 南東北グループでは今年10月に民間として初めて陽子線治療システムをオープンします。これに先立ち陽子線市民公開講座が九州の福岡から始まり全国の主要都市26カ所で開催されます。南東北グループを率いる渡邉一夫理事長が座長を務め、南東北がん陽子線治療センター長の不破信和先生や各地でお迎えする専門のお医者様が、陽子線治療と各科のがんの最新治療の取り組みについて分かりやすく解説してくださいます。  
 PET(ペット)検査もそうですが、陽子線治療はまだまだ一般の方や医療関係者にも十分に知られていないのが現状です。私たちはこの講演会を通して少しでも多くの皆様にがんの早期発見の重要性や先進医療、陽子線治療を知っていただきたいと考えております。  
 がんは日本人の死因の第一位。深刻な国民病とも言われています。南東北グループでは、その撲滅をひとつの理念としております。そのためには、がんを早期に発見し早期に治療することが最も重要です。そこで力を発揮するのがPET検査と陽子線治療です。  
 PETは全身を一度のスクリーニングによってがんを早期発見する最先端の画像診断装置として、精度の高いがん検診に力を発揮しています。これと究極のがん治療として注目されている陽子線治療が組み合わされることで、診断と治療の両面で最も新しいがん医療システムが実現されるわけです。
 
   肺がん陽子線治療前(左)と治療後(右)のPET画像
矢印部分の赤く見える腫瘍が陽子線治療後、改善されているのがわかる
 
陽子線治療の特徴とQOL
 陽子線治療の特徴は、その放射線線量分布が極めて優れていることから、大事な臓器を避けてがんに放射線を集中させることができ、健康な細胞への侵襲が極めて少なく、回転ガントリーを使って数方向から照射できることなどです。また外科的治療ではありませんので、高齢者にとっても身体の負担が少なく、体の機能を温存できることから患者様の高いQOL(生活の質)が確保されます。  
 治療にあたっては、ビーム照射時に体を固定する固定具を作ります。これは患者さんそれぞれに合わせたオリジナルマスクのようなものです。陽子線の照射は1〜2分程度で痛みはなく、治療台での位置合わせを含めて全体で1回20分ほどで終わります。ですので仕事を続けながら、日常の生活を楽しみながら外来でがんを治療できるわけです。  
 兵庫県立粒子線医療センターの全面的なご協力を得て、これまでの臨床的な研究と成果をもとに、不破先生を中心にさらに発展させて行くことになります。またいろいろながんや進行がんへの応用にも期待できると思います。南東北グループは、各診療科が充実しておりますので連携できる利点があります。  
 南東北がん陽子線治療センターでは先日、国から陽子線ビームの使用許可が下りました。次に原子力安全技術センターによる施設検査に合格すれば、いよいよ実際の試験が始まります。ビームが正常に生成され照射できるかどうか。またその線量や命中度を正確にコントロールできているかを確かめる実証試験です。機器そのものは県立静岡がんセンターで安定して稼働しているものをベースに設計されており、民間初の導入ということもあり、三菱電機(株)には設備や調整にたいへんご尽力いただいております。
 
がん医療の未来をみつめて
 ところで、陽子線市民公開講座では、実際に陽子線治療を受けられた患者様にも体験談をお話しいただいております。がんの告知を受けたときの動揺、いろいろな治療法の中で陽子線治療を選択したこと、実際の治療体験、がんを通してどう自分自身や人生と向き合ったかなど貴重なお話をうかがえます。  
 参加された方からは、この治療をもっと早く知りたかった。全国に広めて欲しいという意見も多く、がんになったとき陽子線治療を受けたいかという質問に対しては、74%の方が受けたいと回答されました。7月からは前立腺がんの治療予約が始まる予定です。前立腺がんの場合、照射は大体37回くらい、約2ヵ月かけて計画的に行われることになります。  
 陽子線市民公開講座に来られた患者様や報道関係の方からもお問い合わせが増えてまいりました。  
 がん治療は、新しい時代を迎えていると思います。これまで治療を諦めてこられた方でも、陽子線で治療可能な方もあると思います。  
 陽子線市民公開講座は全国を縦断して連続的に開催してまいります。是非各地の皆様にはこの機会に参加していただき、PET検査と陽子線治療の切り拓くがん医療の最前線を知っていただければと思います。ご来場を心よりお待ちいたしております。


入場は無料です!ただし、事前のご予約をお願い致します。
〔陽子線市民公開講座/以後の日程から〕
第3回 4月27日(日) 午後1時から
会場:名古屋国際会議場 レセプションホール
(愛知県名古屋市)
第4回 5月18日(日) 午後1時から
会場:仙台国際センター 大ホール
(宮城県仙台市)

第5回 6月15日(日) 午後1時から
会場:共済ホール
(北海道札幌市)

お問い合わせ・参加のお申し込みは
〒963-8563   福島県郡山市八山田七丁目17(総合南東北病院内)
TEL. 024-934-5322戟@ 陽子線市民公開講座 事務局

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