がん治療の現在@
  外科手術、放射線治療、薬物療法というこれまでの標準的治療と 陽子線(粒子線)治療、免疫(細胞)療法・温熱療法など
 
がんの診断と治療をめぐって -私たちが知っておくべきこと
 南東北がん陽子線治療センターのオープンが10月19日に予定されています。究極のがん治療とされる陽子線治療を軸に、抗がん剤治療など最新のがん治療の成果も取り入れ、南東北グループでは文字通りがん撲滅の医療を目指すことになります。まさに民間初のがんセンターが誕生するわけですが、最新の検査や治療法を上手に利用し、自分自身で納得のいくがん治療を受けるために、私たち利用者が知っておきたいことをまとめてみたいと思います。 
診断から治療法の選択、あるいは費用の問題も、一人で抱え込んでしまわずに、病院などで相談してみることが大切です。
  
早期発見の重要性
 人は老化とともにがんになる率が高くなっていきます。日本では、毎年65万人にがんが見つかり、それから5年ほどのうちに半分くらいの方ががんで命を落としてしまいます。治療法が進歩し、がんが不治の病ではなくなってきたと言っても、こうした数値を知ると、あらためてがんの恐さを思い知らされます。  
 がんは何よりも早期発見が大切です。小さいうちに見つけられれば、その部分だけを退治することで治すことができます。治療法の選択肢もより広くなるのです。自覚症状が現れてからでは遅すぎます。早期発見と早期治療こそが、がんに打ち克つための最良の方法であることは、将来においても変わることはないでしょう。  
 がんを早期発見するために威力を発揮するのがPET(ペット・陽電子放出断層撮影)です。ただしPET検査も万能とは言いきれません。例えば腎臓、膀胱などの臓器は、薬剤を排出する経路にあたるため、正常な場合でも反応してしまうのです。そこで、PET検査にCTやMRI、超音波検査など、さまざまな検査法を組み合わせることで、現在考え得る完全ながんの検査システムを目指しているのがPETがんドック≠ネのです。
 
標準治療と陽子線治療
 がんは細胞の突然変異と考えられています。年齢が高くなると、細胞の制御が効きにくくなり、がん細胞は勝手に増えてしまいます。原因は遺伝子の傷と言われており、そのうちに宿主まで殺してしまうのです。  
 それでは、現在の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。標準治療として第一に挙げられるのは外科的な手術です。第二の方法が化学療法で、いわゆる抗がん剤による治療法。第三の方法が放射線治療ということになります。  
 日本の現状は7から8割が外科的な治療であり、放射線治療は2から3割ですが、アメリカやヨーロッパで多いのは放射線治療で、がん治療の7から8割を占めています。けれども、そこで行われているのは日本のようなX線治療ではありません。虫眼鏡で光を集めるように、放射線を一点に集中させる先端機器が使われているのです。  
 こうした放射線治療のなかで、究極のものが陽子線治療≠ナす。超一流の外科医のメスに匹敵する切れ味と表現されることが多いのですが、体にメスを入れることなく、がんの病巣だけを狙い撃ちし、周辺組織への副作用もありません。通院で普段通りの生活をしながらがんを治せるのです。陽子線治療ががん治療の理想形≠ニ呼ばれる所以でもあります。
 
第4の治療法とQOL
 ところで、がん治療をめぐる研究は、これまでの標準治療以外の方法も探り出そうと努めてきました。そうした第4の治療法≠ニ呼ばれるものに、自分自身の免疫力を強化することでがんの予防や治療に役立てる免疫細胞療法≠竅A体の深部にある腫瘍部分に熱を与えることで治療効果を得る温熱療法≠ェあります。ともにQOL(生活の質)を重視した治療法としても注目されています。  
 これらの治療法は、両方を同時に用いたり、標準治療と組み合わせたりして、いろいろながんのステージで用いられます。保険診療の適用となるハイパーサーミア(温熱療法のひとつ)では、副作用などで抗がん剤を充分に使うことのできない患者さんに併用することで、通常の6分の1の薬剤量で標準量を使用するのと同じ治療効果が得られるという症例もあります。  
 一方、がんの進行や治療のあらゆる場面で無視できないのが痛みの問題でしょう。患者が治療中も痛みを抱えたまま毎日を送らなければならないとすれば問題です。それを解決しようとするのがペインクリニックです。終末期の痛みを扱うイメージがあるかもしれませんが、現在では治療過程のあらゆる場面で患者のQOLを支えてくれています。
 
治療法の選択とインフォームド・コンセント
 このように、治療の選択肢はさまざまです。もしもがん告知を受けたなら、治療法についても率直に医師に訊ねてみることです。  
 その場合、治療の目的や治療にかかる費用・期間、治療のリスク、副作用や後遺症の有無、退院後の生活スタイルや治療後の検査内容、あるいは、ほかに選択可能な治療法があるかどうかは確認しておきましょう。また、ほかの病院の医師によるセカンドオピニオンを求めることもできます。  
 インフォームド・コンセントの時代ですから、ためらうことはありません。納得のいく治療法にたどり着くことができれば、これほど心強いことはないはずです。


入場は無料です!ただし、事前のご予約をお願い致します。
〔陽子線市民公開講座/以後の日程から〕
第7回 7月6日(日) 午後1時から
会場:とちぎ男女共同参画センター
(栃木県宇都宮市)
お問い合わせ・参加のお申し込みは
〒963-8790   日本郵便郡山支店 私書箱5号 
FAX 024-934-3165  陽子線市民公開講座 事務局
※ホームページからもお申し込み頂けます。 http://www.minamitohoku.or.jp
 
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