医療費に関する基礎知識(2)

科学技術の進歩によって新しい治療法が生まれ、医療へのニーズも多様化しています。こうした状況は、医療保険に対する考え方にも変化をもたらしていくのでしょうか。最先端の医療と現在の保険診療とのギャップを埋めようとする制度のひとつが先進医療。〝究極のがん治療〟と呼ばれる陽子線治療もそのひとつです。民間の保険会社でも日々進歩するがん医療の世界を見つめ、現実の医療にフィットした保険商品の開発を進めているようです。
保険診療と自由診療について
 日本の健康保健制度では、保険がきく保険診療と保険がきかない自由診療があり、両者を併用するのは混合診療と呼ばれ、原則禁止されています。
 ところが、がん医療は日進月歩であり、国内では保険適用とならない抗がん剤などが海外では有効性が認められているといったケースもあるようです。
 「混合診療禁止の原則」に従えば、患者はそうした抗がん剤(自由診療)を選択する場合、検査や入院、その他の保険診療と合わせて一切を自己負担するか、あるいはあきらめるか、という厳しい選択を迫られることになります。こうした矛盾に対して、平成18年に「保険外併用療養費制度」が導入され、例外的に保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認められるようになりました。限定的に混合診療の枠が拡大されたわけです。
 「評価療養」とは、「保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要」と定める先進医療や未承認薬の使用のことで、高度な技術を持つスタッフと、質・量ともに十分な施設・設備を持つ医療機関だけが実施できます。
 一方、「選定療養」とは、「特別の病室の提供など被保険者の選定に係る」医療サービスのことで、いわゆる差額ベッドなどがこれにあたります。
 また、ある保険会社が調査した結果によれば、がん治療費の平均額は約150万円という報告もあり、こうした数字を念頭においたファイナンシャルプラン(お金にまつわる生涯設計)の重要性を説いています。
陽子線治療の現状
 「陽子線治療」は「評価療養」として位置づけられた「先進医療」技術のひとつですが、医療機関は、厚生労働省による先進医療実施施設として認定を受けることで、はじめて保険診療との併用ができるようになります。つまり、陽子線治療そのものは自由診療の扱いでも、入院・投薬・検査など、基礎的なものは保険診療として扱われることになるのです。
 ちなみに、南東北がん陽子線治療センターは、悪性腫瘍に対する陽子線治療(固形がんに係るものに限る)の先進医療実施施設として、平成21年2月1日付けで厚生労働省の認定を受けています。(国内民間医療機関では初めて)
 高齢の方にも優しく、さまざまながんに対する治療効果も高い陽子線治療ですが、治療そのものは自由診療として扱われるため、治療費(先進医療にかかわる技術料/おおよそ300万円)は全額が自己負担となります。南東北がん陽子線治療センターは民間の医療機関ですが、先行する国公立の施設と同水準に治療費を設定することで、医療の公平性の確保に努めています。
 将来的には、通常の保険診療でも陽子線治療が受けられるようになることを望みたいものですが、現在のところは民間保険などを上手に利用して、いざというときに備えておくことが最良の方法のようです。先進医療にかかわる技術料は「高額療養費制度」の対象外ですから、陽子線治療の全額をまかなえる保険商品は魅力的です。こうした保険で陽子線の治療費をまかなうことができた、という患者さんのお話を聞くことも多くなりました。
民間保険の活用にあたって
 保険会社や種類によって、保険商品にはいろいろな特色があります。保険契約の際は、保険期間と支払期間、掛け金の額と給付金の関係、医療保険にがん特約をつけた場合と純粋ながん保険の比較、先進医療の補償、あるいは特約の選択などに留意しておきたいところです。
 また、既に加入している保険の中身をもう一度吟味してみることも必要です。通院でがんを治療するケースも増えています。こうした治療法の変化に伴い、がん保険でも通院治療の補償を強化した新しいタイプの保険も登場しています。
 保険を見直すことは自分自身のライフプランをもう一度見つめ直すことにもつながります。新しい医療の時代は、新しい保険の時代とも言えるのかもしれません。面倒なようでも、生命保険、医療保険、がん保険などをトータルに見直し、自分にとって最適でバランスのとれた保険設計に努力してみたいものです。

先進医療を実施している医療機関の一覧

※平成21年4月1日現在第2項先進医療技術88種類、644件

悪性腫瘍に対する陽子線治療(固形がんに係るものに限る)

千葉県 国立がんセンター東病院

兵庫県 兵庫県立粒子線医療センター

静岡県 静岡県立静岡がんセンター

茨城県 筑波大学附属病院

福島県 一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 南東北がん陽子線治療センター

 厚生省資料より/「悪性腫瘍に対する陽子線治療(固形がんに係るものに限る)」は以上5施設

 

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