1985年に開設された岩沼市の『総合南東北病院』は、宮城県南部の二市二町にまたがる地域医療を支え、脳ドック、人間ドックなどとともにPET(ペット)を用いたがん検診をいち早く整備し、予防医学にも力を注いできた。

 〝患者様第一〟を理念に、〝救急医療の確立〟、〝高度医療の実践〟、〝高齢社会における安らぎの福祉〟を着実に実践する『総合南東北病院』を訪ね、その取り組みをレポートしてみたい。

お子様からお年寄りまで安心して暮らせ、皆様の心の支えとなる病院を目指して

 南東北病院グループは昨年10月、福島県郡山市に『南東北がん陽子線治療センター』を開設し、わが国の民間医療機関として初めて陽子線治療を開始した。それに先立つ2006年にはJR東京駅前に医療の羅針盤『東京クリニック』を開設、先進医療を担う病院グループとして注目を集めてきた。現在は川崎市麻生区に首都圏診療の拠点となる377床の『新百合ヶ丘病院』を建設中であり、世界水準の医療サービスを提供する総合病院として、2012年のオープンが待たれている。
 医療の最先端を担うイメージが強い同グループだが、一方では地域に根ざした医療・保健・福祉施設として、地元のニーズに応え、尽力してきた歴史がある。宮城県の拠点として、その活動を担ってきたのが、医療法人将道会の『総合南東北病院』である。
 沼駅から駅前通りを進み、4号バイパスを横切ってしばらくすると、右手に『総合南東北病院』がある。
 交通網に恵まれた立地である。福島県の浜通りに沿って延びる国道6号線は岩沼市内で4号線に合流し、福島県の浜通り地方からの便もいい。すぐ北の名取市には仙台空港があり、車なら15分でアクセスできる距離だ。有料の仙台東部道路を利用すれば、岩沼インターチェンジからは車でわずか2分の位置にある。
 周辺には海沿いの平地独特の明るく開放的な田園風景が広がる。隣地には市民会館があり、同病院が岩沼市の医療を支える中核的存在である印象を強く受ける。事実、病院の開設は岩沼市の要請に基づくものであり、『総合南東北病院』は岩沼市・名取市・亘理町・山元町という二市二町の二次救急医療を担い、実に16万人エリアの健康と福祉を支えてきた。
お年寄りに優しい医療施設
 「の病院の特徴のひとつは地元への密着です。救急医療はもちろんですが、地域の皆様の人生に寄り添い、多様なニーズに応えられるよう努力をしてきました。100床を備える介護老人保健施設サニーホームも併設しておりますが、地域住民の高齢化にあわせて、訪問看護や居宅介護支援など、福祉や介護を重視した運営に努めています」

医療法人 将道会 常務理事

阿部恵一さん

 そう説明してくれたのは医療法人 将道会 常務理事の阿部惠一さんだ。病院では高齢者に多い脳卒中や下肢骨折などの発症後のリハビリや、介護療養を必要とする方の機能訓練にも力を入れてきたという。回復期リハビリテーション病棟は90床を備え、理学療法士と作業療法士は総勢50人を超える。
 高齢者のためのパワーリハビリもいち早く導入した。パワーリハビリとは、専用に開発されたトレーニングマシンを使って体力の向上と動作性の改善を目指すもので、日常生活を自分自身で送れるようにするための新しい治療法だ。
 こうした特色ある取り組みは各方面からも注目を集め、「先日もある方からお年寄りに優しい病院という嬉しい評価を頂戴したところです」と阿部さんは胸を張る。
脳神経外科の伝統を土台にした頭頚部治療の高い専門性
 「南東北グループは、そもそも脳外科の専門病院としてスタートした。1981年、若き脳神経外科医として渡邉一夫理事長が日本でそれまで死因トップだった脳卒中の撲滅を目指し、郡山市に『南東北脳神経外科病院』を創設したのが始まりである。世界的な脳神経外科医、福島孝徳先生とはそれ以前から親交があり、「すべては患者様のために」という医療理念をそれぞれが掲げ、今日まで、ともに患者さん第一主義の姿勢を貫いてきたという。

MRI/脳の断面や血管像の撮影などの脳検診に用いられる

 そうした脳神経外科分野の専門性の高さは、ここ岩沼市の『総合南東北病院』にも脈々と受け継がれてきた。特に脊椎・脊髄に関しては、脳神経外科の専門医を主体として活動する『日本脊髄外科学会』の認定医・指導医が診療に当たっているという。病院に『脊椎・脊髄専門外来』を設け、形成外科医ではなく、専門の脳神経外科医らが脳から脊髄・末梢神経に至るまで、神経の病気を総合的に診断して手術を行う体制は、全国でも特筆に値するものだ。

脳神経外科医として顕微鏡手術
を行う渡邉一夫理事長

パワーリハビリ用の専用
トレーニングマシンの一例

予防医学としての健診
 『合南東北病院』のもうひとつの特徴は予防医学への取り組みだろう。MRI検査を1万円で実現させた脳ドックをはじめ、メタボリックコース、レディースコースなど、各種の人間ドックとともに、PET(ペット)検査をベースとしたがんドックのコースがある。
 「脳卒中や心筋梗塞は今でも日本人の死亡原因の上位に位置しています。年齢とともに罹患率が高まりますし、自覚症状が出てからでは遅いことが多いですから、定期的に検診を受けて脳や血管の状態をチェックすることが大切です。死亡率一位のがんを含め、早期に疾患を見つけられれば、早期治療で重篤な事態にならずに済むのです。それだけに、健診がかつてないほど大きな意味を持つ時代を迎えているのだと思います」

総合南東北病院
健診事業本部長
今井嘉一さん

 う語るのは健診事業本部長を務める今井嘉一さんだ。人はある年齢を越えた頃から記憶力が減退したり、何ということもない段差に躓いたりと、衰えを痛感することがある。健康上の不安もそれとともに膨らむが、現在私たちは、法定の健康診断や自治体の行う健診、任意で受診できる各種のドックなど、いろいろな種類の健診を受けることができる。これを上手に利用して、健康管理に役立ててほしい、と今井さんは続ける。
 「診もいろいろな種類があります。自分の健康状態や家族歴から不安を感じるところを重点的にチェックすることも可能です。お気軽にご相談頂ければ、目的、検査の種類や実施時期、そして料金など、皆様のニーズに応じた健診メニューやドックコースをご案内できると思います」
早期発見でがん克服を目指す
 んはいかに早期発見をするかが重要である。そして定期的な検査が、がんの早期発見の可能性を高める。
 通常の集団健診などでは、肺がんや胃がん、乳がんなど、患者数の多いがんに検査対象が絞られる。これは法的な健診の限界でもあり、やむを得ない面もあるが、そうした検査では、ある程度成長したがんでなければ見つからないという弱点もある。
 それに対してPETを利用したがんドックは、保険適応にはならないが、全身の臓器を対象とし、可能な限り早期にごく小さながんを見つけようとするものだ。もしも1センチに満たない大きさのがんを発見できれば、それだけ治る可能性が高まることは想像に難くない。
 もちろんPETも万能とは言えないが、従来の検査に比べてがんの発見率は飛躍的に向上した。体に負担や違和感がなく、30分程度で検査できるのは、忙しい毎日を送るビジネスマンにとっても有難い。MRIやCTなど最新の診断機器を組み合わせたドックとしてのPET利用は、さらに精度の高いがん検査を実現する。現在考え得る最良のがん健診として、PETが果たす役割はますます大きなものとなっていくだろう。
 期に発見することこそ、現実的で最も効果の高い〝がん死〟予防策と言えるかもしれない。
 「早い時期にがんを発見できたおかげで命拾いしました、というお客様の言葉を頂いたとき、この仕事が少しでも皆様の役に立てていることを実感し、やり甲斐を感じます」
 そんなPETセンタースタッフの言葉が強く印象に残った。
 
総合南東北病院は日本医療機能評価機構の認定を受けた病院です。また、医療法人将道会では、介護・保健施設など法人全体で品質国際規格ISO9001と、環境国際規格ISO14001を取得しています。
 

 

PETドック受診者インタビュー

男性A氏(仮名)60歳 会社役員・総務部長 ※ご夫婦でPETがん検診と脳検診をあわせて受診
◎総合診断/がんの疑いはなかったが、ピロリ菌陽性のため胃内視鏡検査を予定
 
総合南東北病院(岩沼市)で平成16年から始まったPET検診。実際に受診された方は、どのような感想を持たれているのでしょうか。自分自身ばかりではなく、家族や社員のためにもがんへの不安を取り除き、健康を維持したいと受診を決めたAさん。自分の体を定期的なドックで見張り、「がんは早期に発見して早期に治療することで積極的に克服したい」と、健康管理への意識も変わってきたそうです。
PETがん検診を受けられたきっかけは?
 以前に比べるとあまり調子もよくないし病気に対して、特にがんについては漠然とした不安を感じていました。
 テレビや新聞記事で、簡単な検査で早期のがんが見つけられるという「PET検査」のことをよくやっていたので、何となくは知っていましたが、ある会合でたまたまPET検診を受けた人がいて、話を聞いたら「全体でも5、6時間。楽な検査で、リラックスできて、気分転換になったよ。今の自分の体の状態がわかってよかった」という話で、それなら受けてみようかと思いました。
受けてみた感想はどうでしたか?
 検診前日は「もしがんが見つかったらどうしよう」という不安や、どんな検査をされるのか想像したり、けっこう緊張していたと思います。
 当日は、受付の方や看護師さんが丁寧に検診の内容や流れを説明してくれ、ほんとに安心して検査を受けることができました。
 PET検査前の待機室も落ち着いていてリラックスできました。緊張が解けたんでしょうか。結構眠っていたようです。約5時間くらいの検診でしたが、それほど退屈もしませんでした。むしろ休養に来たような感じでしたね。
 今までのがん検診というと、身体には辛いし、面倒だな、ということで敬遠していたけれど、PET検診だと一度に全身のがんのチェックができるので楽でした。
 検診を通して、最後まで気持ちよく応対して頂いて身体的にも精神的にもリラックスできました。
 脳検診もお願いしたので、簡単に頭からほぼ全身を見ていただきました。ほんとうに気軽に受けられる検査ですね。
一緒に検査を受けられた奥様は、いかがでしたか。
 今回は実は家内の勧めがあって「一緒に受けよう」って言われて受けたんです。おそらく自分一人だったら受けてないでしょうね。
 家内はこれまで、従来の乳がん検診や子宮がん検診も受けているのですが、それに比べて今回の検診は、触られもしないし、恥ずかしいことが全然なくて、とっても楽でよいと言っていました。
料金がちょっと高いかな、というお話でしたが。
 確かに前日まではそう思っていました。でも検診が終わってみると、ほかの検診と比較にならないほど最後まで気持ちよく受診できましたし、身体にはとても優しい検査なのに、従来の検診より10倍くらいがんがよく見つかるというのだから、それぐらいの価値はあると思います。検診の最後に食事が食べられるので、空腹にはとても嬉しかったですね。
 かなり進行してからがんが見つかったという知人の体験をうかがったことがあるのですが、大きい手術をされて大変な思いをされたようです。そうなる前に早期発見して治療できれば決して高いとは思いませんね。
検診の結果はいかがでしたでしょうか。
 検査結果が、データと一緒に報告書として送られてきました。
 今回はがんに関しては何もないということで不安は吹き飛びました。
 本当に安心しました。漠然と抱いていた不安がなくなり、毎日を楽しく過ごしています。思い切って受診して本当によかったです。
 ただし、ペプシノーゲン検査とピロリ菌検査で陽性となっていたので、胃カメラ検査を薦められました。変な話ですが、これだけいろいろやってもらうと安心して胃カメラを受けることができますね。
公私ともに重責を担うお立場で日々お忙しいと思いますが、これからどのように健康管理をされますか?
 今回、がんや重大な病気はないということが分かったのですが、定期的に健康診断することの重要性を実感しました。これからは、できればPETがん検診の基本コース(注:Cコース)と人間ドックを毎年受けて、安心を手に入れたいと思います。
 年に1回くらいゆっくりと時間を過ごし、休養を兼ねて検診を受けるのもいいですね。また、病院に頼るばかりではなく、食生活や生活習慣の改善を心がけたいと考えるようになりました。健康に対する努力も必要でしょうね。自分の健康は自分で守る、セルフケア、これが基本だと思います。

PETセンタースタッフ

写真後列左から渡辺敬夫さん、大久保俊道さん、今井嘉一さん(健診事業本部長)、菊池久美子さん、富塚弘子さん(看護師)、佐伯悟さん(PETマネージャー)、三善和夫さん、郡山芳治さん前列左から佐藤陽子さん、高城智恵さん、鈴木英美さん、高松美和さん

写真はPET-CT(総合南東北病院が宮城県で最初に導入)

岩沼PETセンター概要

医療法人 将道会 総合南東北病院

南東北岩沼PET高度診断治療センター

電話:0120-373-468(FAX共通)

mail:pet@minamitohoku.jp

●受付時間 AM8:30~PM5:00(日祝除く)

●病院電話 0223-23-3151

※検診受付/月~土 AM9:40~AM11:40

 
 がんは症状が出る前に発見できると、そのがんによる生存率が変わってきますから、できるだけ早期に発見することが重要となります。
 PET(ペット)を用いた検査は、今までのがん検診で発見されるよりも、はるかに早い段階のがん細胞を見つけることができます。
 PET検査はまずFDGと呼ばれる検査薬剤を注射。ゆっくり休んだ後、装置の上に寝ているだけで終わります。
PET検査の特徴
■1cm前後のがんを早期に発見可能 従来に比べがん発見率が向上
 従来検査におけるがんの発見率は0.44%。PETがんドック(PET/MRI/CTなど)では2.0~3.0%のがん発見率が期待されます。
■一回の検査で全身のがんをチェック(短時間で検査)できます。
■痛くない、恥ずかしくない検査 
 苦痛や不快感のない楽な検査
 全身を一度にスクリーニングしますから、女性特有のがんも、恥ずかしさを感じずに検査可能です。
PET検査の弱点
多くのがんに有用で早期のがんを見つけることができる PET検査ですが得意ながんと不得意ながんがあります。
以下のような場合、がん検出ができないことがあります。
■約1cm以下のがんはPET検査装置で検出できないことがあります。
■FDGの取り込みが少ないがん(肝臓・前立腺がんや高分化型肺がんなど)では検出が難しくなります。
■胃がんへのFDG集積は少なく、検出が難しいといわれています。
■FDGは尿として排泄されるため、正常でも腎臓や膀胱、尿路に集積する性質があり、検出は難しくなります。
■がん以外への病変/FDGはがん以外でも、甲状腺などの良性腫瘍、 炎症や生理的変化などでも集積し、さらに精密検査が必要になることがあります。
総合南東北病院ではCT検査と腫瘍マーカー・便潜血反応などを組合わせて検診を行っています。 更にMRI・超音波検査を追加して総合的に診断を行います。
 
*ペットを利用したがんドックにはいつくかのコースがあります。また、人間ドック、脳ドックやメタボ健診コースに、PETがん検査やその他オプションの検査を組み合わせることも可能です。
*これらの健診は自費診療(保険外)となりますが、厚生労働省が定める基準により、保険適応になる場合もあります。 過去に(保険適応)がんの治療をしたことがあり再発が疑われる場合や、転移の状況を知りたい場合、また、ほかの画像診断や病理診断で(保険適応)がんが疑われる場合などは健康保険が適応になります。
*詳しくは上記「PETセンター(南東北岩沼PET高度診断治療センター)」へお気軽にご相談下さい。
 

PETがん検診を受診される方への交通費・宿泊費の補助について
総合南東北病院「PETセンター」では、PETがん検診を受診される方で、遠距離の方(片道100kmを超える方)には2万5千円の交通費を、宿泊される方(前泊のみ)には1泊6千円の宿泊費の補助を行っております。観光や休息を兼ねて、宮城県岩沼市を訪ねてみてはいかがでしょう。

センター長
松島忠夫先生

診断部門長
(副院長)
吉野泰啓先生

画像診断センター長
佐藤善二先生

放射線科科長
丹下勇先生

診断支援部門長
(薬局長)
今井文秀先生

 

PETがん検診と人間ドックを毎年定期的に受けることで自分の健康を守っていきたいと考えています。