最新の放射線治療装置の導入によって、総合南東北病院では、がんの放射線治療がさらに充実することになりました。治療は今春から順次開始され、これまでの陽子線治療、ガンマナイフ治療、小線源治療に加えて、放射線治療の選択肢がさらに増えることになります。

腫瘍への集中照射が可能で合併症などの副作用をさらに軽減。これまでは困難とされた症例にも高精度の放射線治療が期待できます。
　強度変調放射線治療（ＩＭＲＴ）を行うリニアック棟が、総合南東北病院南棟の救急外来室に隣接して完成しました。この中に最新鋭のリアニック医療機器であるVarian社のCLINAC ix Linear Acceleratorが導入され、今春から順次がん治療が開始されます。
　近年、がんに対する放射線治療法として強度変調放射線治療（ＩＭＲＴ）が注目を集めていますが、今回総合南東北病院が導入したのは、このＩＭＲＴを行うことができる放射線治療機器「リニアック」の最新型です。
　放射線（Ｘ線など）によるがん治療は、一般的に腫瘍に照射する放射線量を増やせば抗腫瘍効果は大きくなりますが、同時に放射線による合併症の頻度も大きくなります。それは、がん患部以外の正常組織にも放射線が照射されるからです。この問題を解決したのが強度変調放射線治療（lMRT＝Intensity Modulated Radiation Therapy）です。
　ＩＭＲＴとは、コンピュータの助けを借りて腫瘍部分のみに放射線を集中照射して治す画期的な新照射技術です。これによって、従来の方法では不可能だった理想的な放射線治療が可能となり、腫瘍制御率の向上や合併症の軽減が期待されます。
ＩＭＲＴの特長
　ＩＭＲＴはコンピュータによる治療計画（インバースプラン）の計算通りの照射を可能にする、コンピュータ制御の特殊照射法に特徴があります。インバースプランは何千、何万通りもある照射法の中から最適な方法を算出して、理想的なビームパターンを作成します。さらに、コンピュータがマルチリーフコリメータ（数ミリ幅の金属の板により放射線を照射する形状装置）を制御して計算通りの照射を行います。
　各放射線ビーム内の強度は照射野の中の各点で異なるのですが、最終的には全てのビームの分布を合計すると目的の線量分布が実現されることになります。
　特に、がん腫瘍の形状に合わせて放射線の照射を精密に制御できることから、周辺の正常組織への照射を減らし、副作用を抑えながらより強い放射線を腫瘍に照射することを可能にします。
　これまでも多方向からがん腫瘍に放射線を照射することで、周辺組織への影響を抑えた放射線治療は行われてきましたが、ＩＭＲＴはさらに複雑な形状や、危険臓器に隣接するような、これまでは治療が難しいとされてきた症例にも、適切な放射線治療の展開の可能性を高めることになるのです。
　陽子線治療、ガンマナイフ治療、小線源治療など、総合南東北病院ではメスを使わない効果的な放射線治療をすでに行ってきましたが、がんの種類、形、進行度などに応じて提供できる放射線治療の選択肢はさらに広がることになりました。
がん放射線治療センター
総合南東北病院・リニアック棟／2010年春から順次治療開始予定