放射線への視点/健康への影響について

渡邉一夫理事長は原発事故による放射線被ばくに対し「正しくおそれること、そして、おそれすぎてもいけないこと」を強調する。風評や差別をなくすためには、放射線への必要以上の不安を払拭し、科学的に明らかにされたエビデンスに基づく知識と理解が求められるからだ。
 
がんの検査と治療の分野では、科学技術の進歩とともに医療に特化された放射線の有効利用が進む。陽子線治療やIMRT(強度変調放射線治療)、PET検査などがそれである。
 
世界でも先進的なこれらの医療を担う南東北グループでは、多くの放射線腫瘍医をはじめ、医学物理士、放射線技師などが厳格な防護体制のもと、がんの克服を目指し、検査や治療を行ってきた。
 
こうした放射線治療を指揮してきた渡邉理事長は「発がんにはさまざまなリスクがあり、医学的に何が健康に影響を及ぼすのかをこれまでの疫学調査などを踏まえて冷静に判断することが必要だ」と指摘する。しかし、「低線量放射線の長期的な被ばくが健康に与える影響には分からない部分もある」という。
 
今後原発からの放出がない限り、半減期を持つ放射性物質の線量は確実に低減する。だが、放射線に対する不安をぬぐい去るには、実態に即した検証が求められる。「住民や放射線感受性が高いとされる子どもたちの健康を守る」ためにも、安全を見積もったすみやかな除染等の措置、内部被ばくを視野に入れた継続的検査とともに本格的なセーフティネットの整備が急がれる。