広報誌 南東北

 

医食同源の伝統医学

医食同源の伝統医学
東北大学医学系研究科
高齢者高次脳医学講座
関 隆志
今回は中国伝統医学の基本病態の血虚(けっきょ)の症状と治療法をご紹介します。

血が不足した体質

「血(けつ)」が不足した状態を「血虚」といいます。「血」は赤い液体で、からだを潤す栄養と考えられてきました。現代医学の血液と大変似た概念です。ですから血虚のひどい状態は、貧血の症状とほとんど同じです。しかし病院の貧血の検査で正常範囲でも、ここに述べるような症状があれば、「血虚」として治療することがあります。病気と診断がつかない半健康状態を「未病」といいますが、「未病を治す」ということは、このようなことでもあるのです。
 血が不足している人は皮膚や粘膜(顔色、口唇、白目、爪)の色が白っぽくなります。皮膚が乾燥すると痒くなり、冬には粉をふきます。目のかすみや乾燥症状、筋肉がつったりしびれ等の症状となることもあります。不眠や動悸を訴える人もいます。他に異常を合併していない人では痩せていることが多いです。

 女性は月経量の減少、月経周期が長いなどの変化が現れ、ひどくなると無月経や不妊の原因の1つにもなります。月経血の色は薄いことが多いです。月経の出血が終わると疲労感が強くなったり、上記のいろいろな症状が悪化することがあります。閉経して出血しなくなると症状が軽くなることがあります。

血虚の治し方

気虚 血を補う食べ物を増やしましょう。運動すると血の循環も良くなり相乗効果がありますが、激しすぎる運動は血を消耗するので、ほどほどに。
 ツボは、「血海」だけではなく、前回述べた気虚の治療に使う「足三里」も有効です。
 血虚の原因には、日頃の食べ物・飲み物の偏りや過労、慢性疾患などが知られています。気虚も原因になります。日頃から息切れ・疲れやすい・力が入らないなど気虚の症状もある人は、気虚の治療も一緒に行いましょう。気虚の治し方は、南東北255号をご覧ください。
【血虚に効く漢方薬の例(適用症状の例)】
▽四物湯(しもつとう)=血虚を治す基本のクスリ▽当帰飲子(とうきいんし)=皮膚が乾燥して痒い▽帰脾湯(きひとう)=寝汗、動悸▽当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)=生理痛、帯下▽酸棗仁湯(さんそうにんとう)=不眠▽潤腸湯(じゅんちょうとう)=便秘―等
【血虚に効く経穴の例】
血海(けっかい)、三陰交(さんいんこう)、足三里(あしさんり)、太衝(たいしょう)等
【血虚に効く食品の例】
黒豆、ダイズ、豆乳、 落花生、 ナツメの実、クコの実、桑の実、ホウレン草、黒ゴマ、レンコン、椎茸、牛・豚・羊肉、鶏肉、烏骨鶏、鶏卵、牛・豚・羊・鶏のレバー、羊の骨、牡蛎、ナマコ、イカ、ライチ、ロイヤルゼリー、葡萄―等
【血虚によくない食品の例】
菊の花、ハッカ、ニンニク、海草、白酒(黄酒を蒸溜した中国酒)―等

【血海(けっかい)】
 無数の川が大河に注ぐように血を臓器に戻すツボの働きをたとえた名前です。
【見つけ方】膝を曲げた状態で膝の皿の上内側の縁から股に向かって二寸の場所。膝に手のひらを当てて親指先のつくところ。
【効能】脾の経路のツボで血液の循環を改善します。女性の月経不順や生理痛を治す働きもあります。膝や太もも内側の痛みにも効きます。蕁麻疹の治療にも用います。
【押し方の注意】ツボを見つけたら気持ちの良い程度の強さで押します。どのツボもグリグリと力を入れ過ぎて刺激するとツボを痛めてしまうことがあります。

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