広報誌 南東北

 

がん放射線治療の副作用 「がんサロン」ミニ学習会

治療効果の一方で発症の恐れ 照射部位により異なる副作用


副作用に対する知識とケアの大切さを学んだミニ学習会
 がんの治療は病巣や周りの組織も含めて切除する手術療法、抗がん剤による化学療法、放射線療法が三大治療といわれます。最近では切らずに体への負担が少ない放射線療法が注目を集めています。ただ長所や短所、抗がん剤より軽いとはいえ副作用もあります。2月18日㈬に南東北がん陽子線治療センターで開かれた「がんサロン」ミニ学習会でがん放射線療法看護認定看護師の緑川弘子さんが話した「がん放射線療法の副作用」を要約し、治療選択の参考に役立てていただきます。
 がん治療の放射線療法には大きく分けX線や電子線、粒子線などの外部照射と放射性同位元素を針や粒状容器に入れた線源を用い病巣を直接治療する小線源治療などがあります。X線は放射線の通り道の組織に作用しながら身体を突き抜けます。電子線はX線と似ているが、あまり深いところには届かないため主に皮膚やその直下の病変治療に用います。陽子(水素イオン)や重粒子(炭素イオン)などの粒子を加速させた粒子線は、がん病巣のある深さで最も強く作用するため病巣に高い放射線量を集中させることが可能です。例えば肺に照射する場合、X線は肺から背中に突き抜けますが、陽子線は病巣で止まるのが違いです。
 小線源治療には直接入れる組織内照射と子宮や食道、気管などへ線源を入れ治療する腔内照射があるほか内服、注射などで放射性同位元素を全身に投与します。病巣に集まりやすい性質を持つものを用いることで全身の被ばくは最小限になります。
 放射線治療の長所は①体ヘの負担が少ない②臓器の形や働きを温存できる③外来通院が可能④高齢者も受けやすい。短所は①治療が長期②胃や腸など放射線に弱い消化管などの近くに腫瘍があると十分な線量を当てられない③治療終了時点で完治したかどうか評価できにくい―などです。
 放射線治療は、治療効果がある一方で副作用が起こる可能性もあります。対外照射による副作用には治療中から治療後しばらくの間に起こる急性有害事象、治療後数か月から数年後に起こる晩期有害事象があります。照射部位によって様々ですが、皮膚や毛髪に照射した場合、急性では発赤・びらん・浮腫・脱毛、晩期には色素沈着・委縮・潰瘍など。口腔粘膜・舌の照射では急性で発赤・痛み・びらん・味覚障害など。肺や気管への照射では急性・晩期とも咳・痰・発熱・呼吸困難、食道では痛みや嚥下障害、晩期に潰瘍が起こることもあります。
 主な副作用は皮膚炎や粘膜炎、排尿障害など。ある一定の放射線が当たると皮膚の再生能力が衰え皮膚炎が起きる可能性があります。照射開始2~3週間後に赤み・脱毛・皮膚乾燥、5~6週間後に水泡・びらん・出血などの症状が出るようになります。治療終了1~2週間後がピーク。その後快方に向かいますが、治療中から悪化しないようケアすることが大切です。
 まず放射線が当たる場所を知ること。皮膚は清潔に。皮膚表面の汚れを泡でやさしく洗う。石鹸は弱酸性。流すときは弱いシャワー圧で、拭くときは押さえ拭き。衣服も化繊を避け綿の素材でゆったりしたものを着、照射が首周りの場合はノリのきいたYシャツは避けること。放射線が当たる皮膚を掻いたりこすったりしない。予め爪を切っておくのもお勧め。帽子やサングラスで紫外線を避け、髭剃りは電気シェーバーを使用。軟膏やクリームは皮膚にやさしく、ガーゼで覆う時はガーゼに塗ってから患部を覆いテープは使わない方がいい。
 粘膜炎の場所には鼻、口腔、食道、胃、腸粘膜などがありますが、口やのど、食道に照射している場合、粘膜のバリア機能が弱まり乾燥や炎症でのどのつかえや痛みが出現します。口内炎を最小限にするため口腔ケアが大切です。歯肉が出血しやすいときは柔らかい毛の歯ブラシ、スポンジブラシを使い、口腔内が乾燥する場合は保湿ジェルやスプレーなどもお勧めです。
 冷た過ぎや熱過ぎなど刺激物の食べ物は避け、よく噛んで飲み込み、1回の量は少なめ、1日の食事は小分けにした方がいいです。栄養補助食品を利用するのもいいでしょう。禁煙と禁酒は当然です。
 前立腺がんの治療では開始2週間ぐらいから尿の勢いが弱くなったり、頻尿症状が起きたり、極めて稀に尿が出なくなることもありますが、1カ月程度で治療前に戻るといわれます。ただ水分は控えないこと。水分が少ないと尿が濃縮し細菌感染のリスクが高まります。夜間の頻尿予防のため昼水分を摂り、夜は控え目にします。外出時はトイレの場所を把握しておくと安心。頻尿症状が強いときは薬の服用が有効です。その他の副作用については遠慮なく医師かスタッフに相談ください。

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