広報誌 南東北

 

全身みれるPETがんドック ―国推奨の対策型検診も活用―

PET検査を使った「がんドック」とその上手な利用法

 2人に1人が「がん」にかかるといわれながら、がん検診受診率は20~30%。がん患者の約4割は自覚症状がなく健康診断や人間ドックで異常を指摘されています。 5月22日(金)に総合南東北病院で開かれた医学健康講座で同病院の鷺野谷利幸PETセンター長(放射線診断科)が「PET検査を使った『がんドック』とその上手な利用法」と題して講演した内容を要約、健康管理法などを学びます。
 PETはポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略で陽電子放出断層撮影と呼ばれます。陽電子を放出する検査薬を注射、薬が体内を移動し心臓や脳、腫瘍などに集まる様子を体の外側からカメラで撮影(断層画像)、 光る病巣を見つけ原因や病状を診断します。体の広い範囲を一度に検査でき、がんの転移や悪性度、治療効果、再発状況など〝勢い〟を調べられ、がん検診に有効な検査方法です。
 PETで撮影する放射線はガンマ線。陽電子が電子と衝突することによってできるガンマ線を外に配置した検出器で捕まえて画像にします。見つけられる病気の大きさは4㎜が限界、 ヒトの体では約1㎝(条件が良ければ5㎜が見える場合も)。検査に使う放射線を出す薬は多数あるが、多用されているのが「フルオロ・デオキシ・グルコース」(FDG)で9割以上です。
 人間の体はブドウ糖をエネルギー源としておりFDGは放射性フッ素のついた疑似ブドウ糖。ブドウ糖と同様に細胞に取り込まれ、分解されず細胞内で放射線を出し続けるため臓器は光って見えます。 脳が代表的。FDGは時間が経つにつれ尿に排泄されます。がん細胞は正常細胞より3~8倍のブドウ糖を消費するためPET検査はその性質を利用してがんを見つけます。
 医療診断装置には形を1㎜以下まで正確に見ることができるが、それが「がん」かどうか分からないCT、粗いが勢いがはっきりして「がん」、それも悪性かどうかある程度分かるPETとがあります。 最近は両者を組み合わせた複合機の「PET-CT」が主流で当院には4台あります。
 PET検査は、使用する放射性フッ素の半減期が短く作り置きができず、装置自体も高額なので高額になります。
 弱点補う検査も積極受診 脳MRI、腹部超音波、PSAなど…
 我々は自然界から年間2.4㎜Svの放射線を浴びていますが、PET-CT検査の放射線被ばく量は8.5~17.5㎜Sv。福島県のがん死亡率は全国で28位。がんの原因は食べ物や嗜好など生活習慣と密接な関係があり禁煙や節酒、 食生活改善、運動、適正体重など5つの健康習慣実践でがんリスクは男性で43%、女性で37%リスクが低下するといわれます。その意味で健康かどうかを確かめる健康診断、 脳ドックやがん検診など特定の病気を早期に見つける検診が重要です。がん検診はがんが100%見つかるわけではないが、死亡リスクの減少や前がん病変の発見、「異常なし」で安心できるメリットがあります。
 PETがん検診は①がんの早期発見が目的②全身を対象③PET検査の利点・欠点を考慮し複数の検査を組み合わせた総合がん検診が特徴です。
 PETがんドックの上手な利用法は、身体に不調があった場合はまず医療機関を受診し国が勧める対策型検診を活用してください。ただ糖尿病の方は注意が必要です。 PET検査の利点・欠点を知り、苦手ながんはその他の検査で補う必要があります。つまり脳なら脳MRI、胃はX線や胃カメラ、腹部超音波、大腸カメラ、乳がんの場合はマンモグラフィー、 子宮がん検診、前立腺腫瘍ならPSAといったように受診すべきです。その方が見逃しは少なくなります。


トップページへ戻る