広報誌 南東北

 

急増する食物アレルギー

患者の8割近くが6歳以下乳幼児 成人に多い野菜・果物・肉アレルギー

「除去食療法」の判断は慎重に 栄養不足にならない細心の注意を
 食物アレルギーがこの20年間で急増しています。野菜や芋類といった意外な食品による食品アレルギーも見られるようになってきました。 背景には社会的な環境の変化も影響していると考えられますが、原因は完全には分かっていません。今後より一層関心を持ちたい病気の一つです。
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 人間の身体は体内に侵入してきた異物に対し「抗体」を作り対抗します。免疫反応といいますが、何らかのアレルギーのある人は、本来身体には無害なたんぱく質にも免疫反応が働き、 自分の身体に悪影響を与えてしまいます。これがアレルギー反応です。
 この中で「食物アレルギー」は、特定の食物に対してアレルギー反応を起こす病気です。正確には食物に含まれるたんぱく質が異物とみなされ、アレルギーの原因(アレルゲン)となります。 食物アレルギーには、アレルゲンを摂取して直に症状が現れる「即時型」と摂取後時間を置いて現れる「遅延型」に分けられます。遅延型食物アレルギーは毎日同じ物を食べ続けることで腸に抗体ができ、 これによってアレルギーが発症します。健康やダイエットのために特定の食品を摂り続ける女性の方などに多く見られます。なんとなく疲れやすい、 便秘や肌荒れが続く―といった自覚症状がある方はその食品を摂らないように試してみてください。これによって体調が改善されれば知らないうちに遅延型食物アレルギーを起こしている可能性があります。 アレルゲンとなった食品を半年間食べなければ腸の状態が正常化しアレルギーから回復するとされます。
 食物アレルギーは、子どもに多く見られるという特徴があり、6歳以下の乳幼児が患者の80%近くを占めます。子どもの発症原因の多くは、消化機能がまだ十分に働かず、 たんぱく質の分解が不十分なためではないかと考えられています。成長して消化機能が発達すると食物アレルギーが治る人も増えてきます。
 その一方、乳幼児期以降に食物アレルギーを発症した人は治りにくいという問題もあります。子どもと大人では食物アレルギーになる原因に違いがあり、その原因が何かを突き止めるのが難しいことなどが関係しています。 原因食物にも違いがあり、子どもの場合は卵や牛乳が多いのに対して、成人では野菜や果物、肉類が原因のアレルギー患者が多く見られます。
 食物アレルギーの症状では、痒みや蕁麻疹(じんましん)、顔や口唇などの腫れといった皮膚症状のほか、くしゃみ・咳・鼻水などの呼吸器疾患、腹痛・下痢・嘔吐などの消化器疾患などが見られます。
 そのほかに「アナフィラキシー」という命に危険が及ぶ症状もあります。これは食物アレルギーの原因となる食物を食べた直後に、皮膚症状のほかに呼吸困難・血圧低下・意識不明などの重篤な症状を引き起こすことをいいます。
 食物アレルギーの治療では、原因となっている食物を食べないようにする「食物除去」が基本となります。どの食べ物がアレルギーの原因なのか慎重に判断する必要があります。 極端な食品除去は耐性を獲得できず、食物アレルギーが治りにくくなる場合もあります。また原因となる食品の中には良質なたんぱく質やカルシウムなどの栄養素が多く含まれていることもあり、 栄養不足にならないように栄養面での対応も大切です。特に成長期にある子どもの場合は、細心の注意が必要です。
 近年は食物アレルギーだけでなく、アレルギー全般に対して「経口減感作療法」が行われるようになってきました。これは身体に健康被害が起こらない量のアレルゲンを摂取することで、身体に耐性をつけていく治療法です。 ただしこの治療法は、必ず医師の指導の下で行なうことが大切です。自己流で試みることは非常に危険を伴います。
 食物アレルギーに対する有効な治療法がないため原因食物を食べないことが原則ですが、国はアレルギー体質のある人のために食品に使用した場合、食品のパッケージに食品の名称を表示するよう義務付けています。 現在は卵や乳・小麦など7品目が義務、20品目が表示奨励となっています。国は3年ごとに調査し見直すとしていますが、食習慣の変化などによって状況が変化することもありうるだけに注視する必要があるようです。


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