広報誌 南東北

 

泌尿器科のがんの予防と対策

検診・ドックで早期発見・治療 45歳以上はぜひPSA検査を

生活習慣病に注意し、健康長寿に励むのが一番の予防
 超高齢化社会に入り泌尿器科系がんが急増、前立腺がんは2020年には男性の罹患率1位になると予測されています。 12月16日(金)に総合南東北病院で開かれた12月医学健康講座で深谷保男南東北医療クリニック院長(泌尿器科)が「泌尿器科のがんの予防と対策」と題し講演した内容を要約、予防法などを学びます。
 がんの予防は難しく、突き詰めるといかに健康的な生活を送れるかに尽きます。がんになる割合は男性が2人に1人、女性が3人に1人で男性が圧倒的になりやすい。 要因は遺伝だけでなく酒やストレスなど環境要因があるが、圧倒的に悪いのはたばこ。また感染、例えば逆流性食道炎や慢性胃炎、大腸炎、胆のう炎、膀胱炎など炎症持病がある人がなりやすい。 更に酒や塩分の摂取過多、肥満、果物・野菜の摂取不足、運動不足なども環境因子に挙げられます。
 泌尿器系がんには、腎'(腎細胞)・膀胱・前立腺・副腎・腎盂・尿管・陰茎・精巣がんがあります。意外なのが精巣がん。10~20代の男性、中でも中学生や高校生が恥ずかしがって放置したままの例が多い。 睾丸に腫瘍ができるとあっという間にリンパ節に転移、命取りになる危険もあったが、今は抗がん剤の開発で死亡は減少し完治が期待できます。泌尿器系がんは遺伝的要因が強く、特に前立腺がんは親戚や兄弟が罹患の場合、発症率が2~3倍。 がん家系の人はぜひ血液を調べるPSA検査をしてください。また腎臓がんは高血圧、たばこは膀胱がんにも非常に関係あります。
 腎臓がんは自覚症状が殆どありません。稀にあるのが血尿。腰痛や下肢のしびれ、めまい・立ちくらみなどが出た時はかなり進んだ症状です。検診やドックなどの超音波、CTなどで偶然に見つかる例が非常に多い。 エコーやがんPET検診などがお勧め。腎臓がんは骨や肺、脳などにも転移する例が多いが、とにかく手術、早期発見・早期手術で、取るのが一番早く効果があります。現在は腹腔鏡手術という内視鏡の手術が多く、入院は1週間ぐらい。 ただがんが大きかったり、血管にまで達している場合は今も開腹手術を行います。薬物療法では10年位前から分子標的薬や免疫治療薬が使われています。
 膀胱がんの自覚症状は、まず血尿です。2~3か月前に血尿出たが、その後尿がきれいになったから構わないでいた―というのではダメです。あっという間にリンパ節に転移、手遅れになって治せなくなります。 尿の色などをよく観察してください。慢性膀胱炎は女性に多い。何度も繰り返す慢性の炎症には十分注意です。診断には尿道から内視鏡を入れて調べると一発で分かります。手術には内視鏡手術、膀胱全摘出手術と尿の行き場を作る尿路変更術などが必要になります。
 男性特有の前立腺がんは、膀胱の下にある精液の一部を作る前立腺にできるがんで、自覚症状が殆どありません。 前立腺肥大は尿が出にくい、尿が近いなどの症状がありますが、前立腺がんの場合はこうした症状が出にくく、PSA検査したらがんだったという例が多いです。 圧倒的に全身の骨に転移しやすく、特に背骨や骨盤などに行きやすい。腰痛や足のしびれ、首・肋骨の痛みなどが出てきた時は、かなり進行しています。最近は40代にも増えており45歳以上は必ずPSAを計測し、60歳以上は年1回検査してください。 治療は腎臓・膀胱がんなどと違って放射線治療が効きます。当院では陽子線治療、IMRTがあり、手術とほぼ同じ成績です。また75歳以上には薬物療法も効きますが、薬が効かなくなる人もいるので70歳以下は手術か放射線治療を行っています。
 ここからは予防、健康長寿についてですが、まず血圧。普通は午前中低め、午後高めだが、高血圧で危険なのは夜中で心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすい。病院での血圧は140~90、家庭で135~85が目安。塩分制限でかなり下がります。 160~95以上なら薬物投与を考えます。尿路の炎症が長期化するとがん化しやすいので排尿痛、発熱、尿の混濁があれば薬剤投与し、原因となる腎結石や膀胱結石などの除去が必要です。
 男性は齢ごとに肥満になる。食べ過ぎに注意です。がんと食事ですが高塩分、肉や牛乳・卵・バター・マーガリン・クリームなどの動物性脂肪はリスクを上げ、大豆や野菜、果物、魚、コーヒー、ビタミンE(麦芽、トウモロコシ)などはリスクを下げます。 ただ極端な塩分制限などは認知症になりやすいなどといわれるので程度問題。偏食せずバランスの良い食事が大事、和食がお勧めです。運動も重要。1日に徒歩30分やラジオ体操、ストレッチもいい。家でも外でも階段利用です。わが国の100歳以上は6万5千人以上。 ある調査で75%が食事などの環境要因とか。地域の食事が合っているようです。更に大切なのは精神面。ボランティアや趣味に生きがいを見つけたり、達成・充実感を持つ人は長寿です。更に重要なのは笑い。 明るく笑ってくよくよしないことががんにならず、長生きに繋がっているという報告も出ています。
 泌尿器科系のがんは自覚症状が乏しいため検診やドック、PETなどで早期発見し専門医での早期治療が重要。生活習慣病に注意し健康長寿に努めるのが一番の予防です。


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