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難病に苦しむ患者さんを
一人でも減らすために

血管腫・血管奇形は従来同一つ疾患として総称され、病態が複雑で確立した治療法が存在しないことや、病変部位が多岐にわたる事より、専門診療科がなく様々な診療科で診療されることが多いです。

近年は国際血管腫血管奇形学会( ISSVA/The International Society for the Study of Vascular Anomalies) により提案された臨床分類が広く用いられるようになり血管性腫瘍と血管奇形は臨床所見、臨床経過、病理学的所見の差異により、腫瘍と奇形に大きく分類され、各々の疾患の病態が解明されるとともに、適切な治療法が選択可能となってきました。

当院では2009年より放射線診断科外来にて血管腫・血管奇形診療を行っています。治療は放射線診断科のみならず他の診療科と協力して行っています。
治療法に関しても 局所治療であるIVR (動脈塞栓術・硬化療法)や外科的切除のみならず、乳児血管腫に対するβブロッカー(ヘマンジオル)、リンパ管奇形・静脈奇形に対する mTOR阻害薬(ラパリムス)などが選択可能となってきました。
2021年よりリンパ系疾患に対して、2024年より静脈奇形に対してラパリムスが治療適応となり、経口薬剤で先天性疾患の治療が可能となりました。また本薬剤の治療成績は良好で投与された患者さまの約80%で、程度の差はありますが症状の軽減や病変の縮小効果が得られています。従来は外科的切除や硬化療法などの局所治療のみしか選択肢がありませんでしたが経口投与できる薬剤が保険適応となったことは画期的です。しかし副作用に十分注意しなければならない事や薬価が高価であることなど、全く問題がないわけではありません。つまり専門医による適切な治療法の選択が必要であると痛感し、より多くの患者さまに本疾患の病態と治療法について啓蒙するために血管腫・血管奇形センターを立ち上げた次第です。
また動静脈奇形に対してもMEK阻害剤:トラメチニブ(メキニスト錠)が海外治験中です。

血管腫・血管奇形の種類

乳児血管腫 Infantile hemangioma(IH)

    特徴

  • 同義語:苺状血管腫、若年性血管腫
  • 生下時には存在しない(60%)
  • 臨床経過
    増殖期:生後数週-数ヶ月から1-2歳にかけて増大
    退縮期:5-8歳にかけて自然縮小することもある。
  • 女児に多い(男女比 約1:3)
  • 皮下では苺状、深部皮下では青紫色を呈する。
  • GLUT(erythrocyte glucose transporter protein)-1:陽性

    治療

  • Vビームによるレーザー治療
  • β-ブロッカーが有効(Hemangiol)
  • 外科的治療

先天性血管腫 Congenital hemangioma(CH)

    特徴

  • 乳児血管腫より稀な腫瘍。
  • 胎生期に発生し、生下時には腫瘤は既に完成している。
  • 臨床経過から2typeに分類
    急速退縮型rapid-involuting type(RICH):14ヶ月以内に完全に退縮
    非退縮型non-involuting type(NICH):成長に伴い増大
    部分退縮型 partially involuting type (PICH):中間型
  • ピンク~紫色、Pale halo sign
  • GLUT – 1:陰性

    治療

  • Vビームによるレーザー治療
  • 外科的治療

毛細血管奇形 Capillary malformation(CM)

    特徴

  • Low-flow typeの血管奇形
  • 同義語:ポートワイン母斑、単純性血管腫、毛細血管拡張
  • 生下時には存在しているが、気付かれないこともある。
  • 真皮浅層における毛細血管の拡張。
  • 境界明瞭で隆起しない紅色斑。
  • 加齢に伴い色調が濃くなり、皮下脂肪組織は厚くなる。
  • Struge-Weber syndromeやKlippel-Trenaunay syndromeなどの一症状となることがある。

    治療

  • 色素レーザー治療
  • ラパリムス内服治療
  • 外科的治療

静脈奇形 Venous malformation(VM)

    特徴

  • Low-flow typeの血管奇形
  • 同義語:海綿状血管腫
  • 生下時には存在しているが、気付かれないこともある。
  • 思春期や妊娠によるホルモンバランスの変化で増悪することがある。
  • 整容的問題:変形・変色・肥大
  • 機能障害:疼痛(鬱血、静脈石)、熱感、感染、潰瘍形成、四肢肢長差、 拘縮、可動域制限、出血・凝固能異常(LIC)
  • 青色ゴムまり様母斑症候群:全身の皮膚および消化管を中心とした内臓に生じる静脈奇形を特徴とする。全身の皮膚以外に、消化管をはじめとする多臓器に病変が認められ、ときに重篤な出血性合併症を起こす。

    治療

  • ラパリムス内服治療
  • 直接穿刺硬化療法
  • 外科的治療

リンパ管奇形 Lymphatic malformation(LM)

    特徴

  • Low-flow typeの血管奇形
  • 同義語:リンパ管腫、嚢胞性ヒグローマ
  • リンパ管が異常に膨張した病態
  • 嚢胞の形態によりMacrocystic、Microcystic、Mixed typeに分類
  • 整容的問題:変形・変色・肥大
  • 病変の直接穿刺では血液ではなく、 透明黄色のリンパ液が流出する。

    治療

  • 直接穿刺硬化療法
  • ラパリムス内服治療

動静脈奇形 Arteriovenous malformation(AVM)

    特徴

  • High-flow typeの血管奇形
  • 毛細血管を介さない動静脈の吻合異常
  • 短絡部は異常血管の集合体であるnidusや様々な太さの動静脈瘻を形成し、流入・出血管の拡張・蛇行・瘤化など2次的変化を伴う。
  • 外傷、思春期、妊娠、医原性に増大することがある。
  • 血行動態の確認にはCTAが有用である。

    治療

  • 硬化塞栓療法
  • 外科的治療
  • 保存療法(圧迫療法)
  • トラメチニブ(メキニスト錠)内服治療 ※海外治験中

    Schöbinger分類

  • stageⅠ(静止期):皮膚の紅潮、発赤
  • stageⅡ(拡張期):異常拍動音の聴取、増大
  • stageⅢ(破壊期):疼痛、潰瘍、出血、感染
  • stageⅣ(代償不全期):心不全

血管性病変に対するIVR治療実績

    2024年  合計108件

    2023年  合計120件

    2022年  合計81件

ラパリムス投与実績: 30例

内訳

静脈奇形・混合型血管奇形:21例

リンパ管腫症: 1例

(東京クリニック: 8例)

ラパリムス錠スライド(PDF)

治療実例

医師紹介

総合南東北病院での血管腫・血管奇形センター内の各科との連携

放射線診断科 センター長 今井 茂樹

形成外科 吉本 信也
耳鼻科 植木 雄司
小児科 阿部 奏子
整形外科 鹿山 悟

放射線診断科 副センター長 川倉 健治

心臓血管外科 佐戸川 弘之・緑川 博文
外傷センター 髙木 基行・加藤 成隆
緩和医療 渡邉 睦弥
麻酔科 服部 尚士