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物理学的特長

X線やガンマ線は光子線(電磁波)に属するため、体の中で停止させることは出来ず、通り抜けてしまいます。

 

しかし、陽子(水素の原子核)は光速近くまで加速した状態で体に照射すると、加速エネルギーに応じて一定の深さの所まであまりエネルギーを喪失せず通り抜け、粒子の持つ運動エネルギーが0近くになる直前で急速に周囲にエネルギーを伝えて停止します。

 

これがいわゆるブラッグピーク(Bragg Peak)と呼ばれる陽子線治療における物理学的な特長です。ブラッグピークをうまく腫瘍の部位で形成させれば、体の表明から腫瘍までの部位はX線治療に比べて無駄な被曝を押さえることができますし、何より腫瘍を超えてより深部に位置する正常組織には一切放射線が照射されないというメリットがあります。

  

生物学的特長

そもそも放射線治療でどうしてがんを治せるのでしょうか。実際、放射線の力でがんを焼いているわけでもなく(放射線治療で0.1度も温度は上がらない)、切るわけでもない(痛くない)のですから。実は、放射線によってがん細胞の中にある遺伝子を破壊しているから治療が可能なのです。

 

X線は単位長さあたりに与える平均エネルギーが低い放射線(低LET放射線)といわれています。一方、陽子線は中等度に(中LET放射線)平均エネルギーが高い放射線です。そのため、粒子線はX線に比べ遺伝子を構成しているDNAの2重らせんを傷つける可能性より高く、X線に比べて放射線による損傷が回復しにくく、難治性の腫瘍でも根治に導く可能性が高いと言われています。

  

がん陽子線治療の臨床例
50歳代男性

局所進行切除不能膵体部癌(cT4N1M0/stage IVa)。陽子線治療と抗癌剤治療を行った。6年4か月後のCTで腫瘍は縮小した状態を維持して健在。

 

 

50歳代男性

10cm大の肝癌(Child-Pugh分類 A)陽子線治療を行った。2年6ヶ月後のCTで腫瘍は縮小した状態を維持して健在。

 

 

がん陽子線の治療実績

2008年10月に開院してから、2020年4月まで 5,406名の陽子線治療を行いました。部位別にみると頭頸部腫瘍、肺がん、前立腺がん、食道がん、肝胆膵がんが多くを占めます。

 

 

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